アンドロイド・ニューワールド
「試験前にこんなに勉強したの、初めてだよ」

と、奏さんは言いました。

「そうなんですか?」

「うん。やっぱり、教えてくれる人がいると、全然違うね。いつもの試験は大体自信がないけど、今回は大丈夫な気がする」

と、奏さんは言いました。

気がする、ということは、特に根拠がある訳ではないのでしょうが。

しかし、「全然駄目だ…」と、落ち込んだまま試験に臨むのと。

「自信ある!ばっち来い!」と、気迫を持って試験に臨むのとでは、気の持ちようが違いますね。

人間の感情が分からない私には、縁のない話ですが。

「それもこれも、瑠璃華さんが勉強会を開いてくれたお陰だよ。ありがとう」

と、奏さんは言いました。

「どういたしまして」

と、私は答えました。

あの程度、別に礼を言われるようなことではなかったのですが。

むしろ、放課後に勉強会を行う、なんて友達らしいことをさせてもらったので。

私の方が、奏さんに感謝するべきなのかもしれません。

「…でも、瑠璃華さん。今更こんなこと言っても、遅いかもしれないけど…」

と、奏さんは言いました。

「何でしょう?」

「瑠璃華さん、俺に教えてくれるばっかりで、瑠璃華さん自身は勉強出来てなかったよね。試験、大丈夫…?」

と、奏さんは不安そうに聞きました。

何が大丈夫なのか、と一瞬考えましたが。

奏さんは、私の試験の点数について、心配してくれているのだと分かりました。

「問題ありません。私は成績には拘泥しませんから」

「いや、でも一応…。瑠璃華さん頭良いみたいだから、赤点はないと思うけど…でも…少しくらいは…」

「心配してくださって、ありがとうございます。しかし、私の試験の点数については、あなたが心配することはありません」

と、私は言いました。

「瑠璃華さん…。本当に大丈夫?」

「はい。問題ありません」

「…」

と、奏さんは無言で、やはり不安そうな顔をしていましたが。

私にしてみれば、何故奏さんが、私の成績を気にするのかが分かりません。

私は、全国の高校一年生の試験問題全てに、目を通しました。

そして、一瞬で確信しました。

この程度の問題、『新世界アンドロイド』なら、解けないものはない、と。
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