アンドロイド・ニューワールド
無事に終わったので。

「どうでしたか?中間試験の手応えは」

と、私は聞きました。

すると。

「バッチリ!」

と、奏さんはとても良い笑顔で答えてくれました。

それは何よりです。

「今までにないくらい、良い出来だったよ」

「良かったですね」

「本当。それに、瑠璃華さんが作ってくれた練習問題と同じ問題が、いくつも出題されてたし…。あまりに見覚えがあるから、びっくりしたよ」

と、奏さんは言いました。

確かに、それは私も思いました。

「あ、これ私の作った問題と同じですね」とおもった問題が、いくつもありました。

更に。

「古文の問題から引用されてたの、あれ、一緒に解いた『ルティス帝国英雄伝』の一節だったよね」

「はい」

と、私は答えました。

恐らく高確率で、『ルティス帝国英雄伝』からの出題はあるだろう、と思って、練習問題に組み込んだのですが。

案の定その通りだった上に、引用した章までドンピシャだったとは。

この辺りは際どいだろう、と思いながら練習問題を作ったのですが、まさにその通りでしたね。

「瑠璃華さんに訳を教えてもらってたから、スラスラ解けたけど…」

「はい」

「…えっと、あの…聞きづらいんだけど」

と、奏さんは声を潜めて言いました。

「はい、何ですか?」

「まさか瑠璃華さん…。事前に職員室に忍び込んで、カンニングしてた訳じゃないよね…?」

「…」

と、奏さんがあまりに、突拍子もないことを言うので。

私は、思わず言葉が出てきませんでした。

何を言い出すかと思えば。

「まさか。いくら私でも、そこまではしていません。露見したときのリスクを思えば、リターンが少な過ぎます」

と、私は言いました。

えぇ、確かに私は、今回の試験で、どんな問題が出題されるかは知りませんでした。

「そ、そうだよね。良かった…。ごめん、変なこと言って」

「全くです。濡れ衣というものですね」

「ごめん、ごめん。悪かったよ」

「いえ、気にしないでください」

と、私は言いました。

…。

…確かに私は、「今回の」試験内容は、確認していませんでした。

その代わり、こっそり学校のシステムに侵入して、「過去の」試験内容は、バッチリ見ました。

…が。

「あぁ、良かった。今回の試験は、安心して結果を待っていられるよ。いつもなら、ハラハラしながら待ってるんだけど」

と、奏さんは嬉しそうに言っていたので。

…世の中には、知らない方が良いこともあるというものです。

「…えぇ、良かったですね」

と、私は何事もなかったことにして、全て忘れました。

友人がこんなに喜んでくれているのだから、それ以上に大切なことはありません。
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