アンドロイド・ニューワールド
…それよりも。

「奏さんのご両親は?」

「えっ…」

と、奏さんは若干狼狽えました。

「そういえば奏さんは、他のクラスメイトと違って、お昼は毎日コンビニか購買部で買ってきたものですよね。お弁当は作られないのですか?」

と、私は尋ねました。

このときの私は、とても浅はかだったので。

このような質問が、奏さんにとって傷を抉るものであることに、気づいていなかったのです。

通常、学生のお弁当というものは、大抵の場合その学生の親が作るものです。

まぁ、自分で作る人もいるでしょうが。

奏さんの場合、車椅子用のキッチンでなければ調理がままならないので、自分で用意するのは難しいでしょう。

それとも奏さんのご両親は、料理が上手くないか、あるいは朝に弱いのでしょうか。

すると。

「…」

と、奏さんは無言で、人差し指を上に向けました。

微笑んではいますが、何だか儚い笑みでした。

…上?

「…上。二人共、天国にいるよ」

「…」

と、私は思わず、返す言葉が見つかりませんでした。

これは意外な返答でした。
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