アンドロイド・ニューワールド
1110番『アロンダイト』は、紺奈局長にいたく懐いている。

それはもう、病的なまでに。

第2局のみならず、『Neo Sanctus Floralia』の誰もが知るところである。

一部の局員からは、『ヤンデレアンドロイド』と呼ばれるほどに。

うん、実に的確に、彼の特徴を表すあだ名だと思う。

人の感情を持たず、目立った特徴を持たないよう、均一に造られたはずの『新世界アンドロイド』に。

何であんなに、「人間的な」アンドロイドが生まれてしまったのかは、『Neo Sanctus Floralia』の永遠の謎である。

まぁ、元々『新世界アンドロイド』には、個体差があるけれども。

碧衣君の場合は、色々と極まってるよね。

本物の人間でも、なかなかあんな風にはならないよ。

「元々君が『人間交流プログラム』を考案したのも、碧衣君の為なんでしょ?あまりに自分に傾倒し過ぎてるから、外に目を向けさせようとして」

『…その通りだ。1110番の、あの謎の性格が、傍にいる人間が『Neo Sanctus Floralia』の局員しかいないという、閉鎖的な空間に閉じ込められているからだと判断して…。それで、『人間交流プログラム』を考案し、一番最初の被験者に、1110番を選んだ』

正直だ。

『それと、あまりに懐いてきて、むしろ怖くなってきたから、ちょっと遠くに離れさせたいと思った』

本当に正直だ。

まぁ、ちょっと紺奈局長の悪口言ってたってだけで、相手を半壊させるくらいだからね。

あれは重症だよ。

噂によれば、人間だろうが『新世界アンドロイド』だろうが、自分以外の人物が紺奈局長に近寄らないよう、目を光らせているとか。

彼の脳内には、「局長にちょっかいをかけようとしている敵リスト」なるものが存在しているとか。

…うん。やっぱり『ヤンデレアンドロイド』に相応しい。

『我々にも、何故あのような『人型聖宝具』が生まれたのか分からない』

「うん、私にも分からないよ」

こればかりは、個体差の一言で片付けられるとは思えない。

でも、これだけは分かる。

「碧衣君もまた、瑠璃華ちゃんと同じ。たった一人の相手を通して、人間の感情を学ぼうとしている。お互い、方法が違うだけで」

『…』

「まだまだプログラムは途中だよ。私達に出来るのは、これから二人がどんな風に人間の感情を手に入れていくか、辛抱強く見守ること。必要なときには助言をすること。これだけじゃない?」

『…そうだな』

良かった。意見が合って。

何だか、上手く言いくるめちゃった感が否めないけども。

しかし、これが私の本音だ。
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