アンドロイド・ニューワールド
…紺奈局長が、あまりに気の毒だったので。

「紺奈局長…。これ良かったら…おやつにどうぞ…」

私は、クーラーボックスの中のチョコレート菓子を一つ、紺奈局長に献上した。

「あ、いや…自分はそういうものはあまり…」

紺奈局長は、そう言って遠慮しようとしたけれど。

代わりに、碧衣君の方が、目を輝かせた。

瑠璃華ちゃんに見習って欲しいくらい、感情豊か。

「あ!それ知ってますよ。最後までチョコたっぷりの奴ですよね」

「え?あ、そうだけど。よく知ってるね、碧衣君…」

第2局では、こういうお菓子を目にする機会は少ないだろうに。

別に禁止されてはいないけど、局長である紺奈局長が、あまり甘いものを好まないこともあって。

従って碧衣君も、こういうものを食べる機会は少ないと思ったんだけど…。

「食べ方も知ってますよ!丁度良かった、そのお菓子って、二人じゃないと食べられないんですよね」

「え?」

「一本の両端をお互い口に咥えて、同時に食べ進めるんですよね。で、最後は…ふふふ」

何笑ってるの?

物凄く、知識が世俗的な感じに偏ってる。

これには、紺奈局長も動揺。

自分のところのアンドロイドが、一体何処でそんな破廉恥な情報を仕入れてきたのかと、頭の中フル回転で考えているに違いない。

ますます可哀想。

そして、このお菓子を勧めてしまったことを、今更になって後悔した…けれど。

時は既に遅し。

「じゃあ、有り難く頂きますね。ありがとうございます、久露花局長」

碧衣君は、笑顔でチョコ菓子を受け取った。

「う、うん…」

「それじゃあ、また会いましょう。僕は人気のないところで、局長と仲良くお菓子食べてくるので!さっ、行きましょうか局長」

「あ、あぁ…?」

明らかに疑問形になってるけど、碧衣君は全く気にせず、腕を組んだまま、るんるんと去っていった。

…紺奈局長。

今度…温泉旅行の旅でもプレゼントしようかな…。

あ、でもすかさず碧衣君がついていきそうだなぁ…。

駄目か…。

「た、大変ですね…。紺奈局長も…」

一連のやり取りを見ていた、翠ちゃんの一言である。

「本当にね…」

君の、その一言に尽きるよ。
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