アンドロイド・ニューワールド
入場行進をしながら。

私は、ちらりと観客席を見て、どんな人物が来ているのかを確認しました。

成程。恐らく生徒達の親族と見られる、中年期の大人達が目立ちますね。

あれ?今、紺奈局長と碧衣さんの姿も見えたんですが。

あぁ。あの方達も来てたんですね。

『人間交流プログラム』の、経過観察の一環でしょう。

お二人共仲良くくっついて、碧衣さんの方は、何やら細長い棒のようなものを、紺奈局長の顔に押し付けていますが。

あれは何の儀式なのでしょうか。

それから、我らが第4局の久露花局長と、朝比奈副局長の姿も見えました…が。

「瑠璃華ちゃんは何処かな〜」

「あ、あれじゃないですか?ほら、車椅子押してる…」

「あ、本当だ本当だ。車椅子の子を押してあげてるんだ…ね?」

と、局長と副局長は言いました。

ここからでも、二人の会話の内容は聞こえます。

『新世界アンドロイド』の集音性能は優秀です。

ん?でも何故か先程、局長の言葉の末尾が、疑問形だったような気がするのですが。

何か気になるものでも見えたのでしょうか。

「え…。え…!?あれって女の子?じゃないよね?男の子だよね!?」

「か、髪も短いし…小柄ですけど…そ、そうですね。男の子ですね…」

「えっ!?じゃあ、瑠璃華ちゃんのお友達って、男の子だったの!?」

と、局長と副局長は言いました。

二人共、とても動揺しているように見えます。

結構な大声を出しているので、周りの観客が、不思議そうな顔をして局長と副局長を見ていますが。

局長と副局長は、そんなことにも気づいていない様子です。

一体どうしたのでしょうか。

「奏さんって言ってたから、女の子の名前かと…!」

「で、でもよく考えたら、男女共通の名前ですよね…」

「そういえばそうだ!なんてことだ。瑠璃華ちゃん、ボーイフレンドを作ってたんだね!?それは予想外過ぎた!」

と、局長と副局長は言いました。

相変わらず、声が大きいです。

それ以上に観衆がざわついているので、あまり目立ちませんが。

どうやら、奏さんの性別の話をしているようですね。

…奏さんの性別が何か、問題でもあるのでしょうか?

人間には基本的に、男性と女性の2タイプしかないのですから、確率としては二分の一では?

何故、同性だと決めつけていたのでしょう?

「ど、どうなんだろう?『新世界アンドロイド』が、ボーイフレンドを作るって…」

「わ、分かりません。前例のないことなので…」

「だ、だよね。これって何?もしかして、種族を越えての愛が発生するとか、そういうことなの!?そういうことになる可能性はあるってことだよね!?」

「お、落ち着いてください局長」

「あ!でも種族を越えた愛は、さっき碧衣君に嫌と言うほど見せられたから、それはアリなのかもしれない…。って、でも瑠璃華ちゃんはアリなの!?」

と、局長と副局長は言いました。

何やら、議論が白熱しているようですが。

大丈夫でしょうか?
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