アンドロイド・ニューワールド
私が最初に出場する種目は。

借金競争じゃなくてちょっと残念だった、例の種目。

そう、借り物競争です。

実は、種目のルールがよく分かっていないのですが。

早速列に並んで、入場門からグラウンドに入場し。

先に競技を始めた生徒達の様子を見て、何となく察しました。

よーいどん、でスタートし。

箱の中にある、白いメモ用紙のようなものを、一枚取り。

そこに、借りてくる「お題」が書かれているようです。

そして、そのお題に合致したものを探して、それを「借りて」一緒にゴールする。

それが、借り物競争のルールのようですね。

成程、理解しました。

しかし、これは運の要素も含まれますね。

今のところ、「眼鏡をかけた男子生徒」とか、「髪の長い女子生徒二人」のような。

このグラウンド内にあるものが、お題になっているようですが。

運悪く、「火星」とか書いてあったらどうしましょう。

私は今すぐ宇宙航空モードに移行し、火星を借りてこなければなりません。

そうなると、ちょっと大変ですね。

そのような、厄介なお題だったら、手間がかかります。

出来れば、簡単なお題であると嬉しいのですが。

せめて月なら、大きさ的にも距離的にも手頃なんですが…。

と、思っていたら。

いざ、私の番がやって来ました。

「あっ、翠ちゃん翠ちゃん、瑠璃華ちゃんの番だよ」

「はい、そうですね」

と、局長と副局長は言いました。

私の集音性能は高いので、遠くからでも、二人の会話の内容がよく聞こえてきます。

「…瑠璃華さん、頑張れ…」

と、奏さんは言いました。

私の集音性能は高いので、生徒用テントでポツリと呟くように言った、奏さんの小さな声もよく聞こえてきます。

応援ありがとうございます。

お友達が応援してくれているなら、頑張らなければいけませんね。

スタートを告げるホイッスルが鳴り、私は走り出しました。

真っ先に、箱の中に手を突っ込んで、メモ用紙を一枚取ります。

こればかりは、運勝負。

迷っている時間が惜しいので、一番初めに手に触れたものを選びましょう。

そうして選んだ紙を、私はペラリと開いてみました。

そこに書いていたのは。
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