アンドロイド・ニューワールド
そんな訳で。

私は、棒略奪種目に出陣することになりました。

列に並んで、グラウンドに出ると。

「ふぅ、やっと落ち着いた…。さて、落ち着いたところで、今度は『カットキット』たーべよっと」

と、局長は言いました。

相変わらず、ここにいても局長と副局長の声が聞こえます。

カットキット…。これまた、局長お気に入りのチョコレート菓子ですね。

細長いウエハースに、チョコレートをまぶしたお菓子です。

何なら、カットキットをぽりぽり食べている、局長の咀嚼音まで聞こえます。

すると。

「…あれ?局長…あれ、瑠璃華さんではないですか?」

と、副局長は言いました。

しかし。

「ん〜!一仕事終えた後のカットキットは最高…」

「きょ、局長!カットキットは良いですから、グラウンドを見てください。あれは、瑠璃華さんではないですか?」

「ふぇ?」

と、局長は間抜けな声で言いました。

私の存在は、カットキットに負けたのでしょうか。

「んん…?あ、本当だ!瑠璃華ちゃんだね。何で?棒奪いに出るなんて言ってなかったのに」

と、局長は言いました。

ようやく、私の存在に気づいたようです。

「誰かの補欠なのかな?」

「分かりませんけど…。でも…瑠璃華さんが棒奪いって、大丈夫なんでしょうか?」

と、副局長は不安そうな声です。

副局長の心配はごもっともです。

略奪行為ですからね。危険なのは誰しも分かることです。

しかし、だからこそ私は。

友人を、このような危険な戦場に送り込む訳にはいかないのです。
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