アンドロイド・ニューワールド
…さて。

意気込んだのは良いですが。

残念ながら、クラス対抗リレーは、午後の最後の種目です。

それまで、私と奏さんの出番はありません。

更には、その間に昼食を挟むことになります。

そして今は、その昼食の時間です。

私と奏さんは、教室に戻って、いつも通り一緒に食事を摂取することにしました。

しかし。

「…?何だか、クラスメイトが少ないですね」

と、私は言いました。

教室内を見渡すと、いつもの定位置で昼食を摂っているはずのクラスメイトが、何名か見当たりません。

湯野さんと悪癖お友達一行も、姿が見えません。

何処に行ったのでしょう?

「あぁ、それは多分、家族と一緒にお弁当食べてるからじゃないかな」

と、奏さんは言いました。

家族と一緒に?

「どういうことですか?」

「運動会は、ほら、家族が見に来てる人も多いでしょ?だから、お昼の時間だけ、家族と一緒にお弁当を食べることが出来るんだよ」

と、奏さんは説明しました。

成程、理解しました。

観客席に家族が来ている生徒は、いつもの教室ではなく、家族と共に観客席で、一緒に食事をしているということですね。

そんな例外が許されるのですね。

「だから、瑠璃華さんも行って良いんだよ」

と、奏さんは言いました。

「はい?」

と、私は聞き返しました。

私が何処に行くと?

「家族、見に来てるんでしょう?瑠璃華さんは」

「血の繋がった家族ではありませんが、久露花局長と朝比奈副局長が来ていますね」

「だったら、その二人のところで、一緒にお弁当食べてくれば良いよ。折角来てるんだから。こんな機会は滅多にないよ」

と、奏さんは言いました。

何故か、私から少し視線を逸らして。 

「…奏さんは?奏さんは、誰か見に来てくれてるんですか?」

と、私は聞きました。

確か奏さんは、児童養護施設から通ってきてるんでしたよね。

しかし。

「来ないよ。施設の子供は多いし、職員の人達も忙しいから。高校生にもなった子供の運動会を、いちいち見に来たりしない」

「…」

「だから、瑠璃華さんだけでも、家族と一緒にお昼食べてきなよ。俺のことは気にしなくて良いから」

と、奏さんは笑って言いました。

その笑顔は、いつもの奏さんの笑顔ではないと判断しました。

無理矢理顔の筋肉を動かしているような、歪な笑顔です。

つまり、本心では笑っていないということですね。
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