アンドロイド・ニューワールド
…?何でしょう。

奏さんは、このエリアでは珍しい、大きめの檻の中で固まっています。

まさか、その檻に潜む何者かが、奏さんに狙いを定めたのでしょうか。

しかし、そうは行きません。

私の目が黒っ…くはないですが、私の目が瑠璃色のうちは、そんなことは許しません。

「下がってください、奏さん。あなたの身は、私が守ってみせます」

と、私は言いました。

同時に、奏さんの前に滑り込みました。

奏さんを硬直させるくらいなのですから、きっととんでもなく凶暴な生物が潜んでいるに違いありません。

すると。

「これは…コモドオオトカゲですか」

と、私は言いました。

コモドドラゴンとも呼ばれている生き物です。

小さいイメージを持たれがちなトカゲの中でも、かなり大きめのトカゲです。

毒も持っている、厄介な種族ですね。

そのコモドオオトカゲが、まるで奏さんに喧嘩でも売るかのように、こちらを睨んでいました。

これは、奏さんが驚くのも無理はありません。

「このトカゲ…良い度胸ですね。私の友達に喧嘩を売るとは。ガラス越しだからと思って油断していたら、痛い目を見るということを教えてあげましょう」

と、私は言いました。

「見ててください奏さん。私は戦闘モードになると、目から衝撃波を出すことが出来ます。この衝撃波は、ガラス越しでも貫通します」

「え?ちょ、まっ」

「『人間交流プログラム』中は通常モードでいるよう指示を受けていますが、今は非常時。私の判断で、セーフティを解除、」

「しなくて良い!しなくて良いから!大丈夫!思いの外大きいのがいて、しかもこっちを見てたから、ちょっとびっくりしただけだから!」

「止めないでください奏さん」

「止めるよ!」

と、奏さんは叫びました。

この叫び声に、他のお客さん達が、何事かとこちらを見つめました。

…む。

これだけ見られていては、戦闘モードに移行するのはやめた方が良さそうです。

『新世界アンドロイド』の存在は、基本的に一般人には秘密にされていることですし。

仕方ありません。

「奏さん、戦略的撤退です。次のエリアに行きましょう」

「そ、そう。そうしよう」

「おのれ、コモドドラゴン…。次会ったときは、容赦しませんからね」

「うん。容赦してあげてね」

と、奏さんは言いましたが。

私は、小走りに奏さんの車椅子を押し。

トカゲ・カメレオンエリアから、脱出したのでした。
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