アンドロイド・ニューワールド
会計を終えて。

「はい、どうぞ奏さん。ナイルワニです」

「あ、ありがとう…?」

と、奏さんは言いました。

何故疑問形なのでしょうか。

「ま、まぁ良いか…。それと、お金返すよ」

「何のですか?」

「何のって、このワニの」

と、奏さんは答えました。

あぁ、ナイルワニのキーホルダー代ですね。

「別に構いませんよ。大した額じゃありませんでしたし」

「いや、それでも返すよ」

「律儀ですね、奏さんは」

「女の子に奢られるっていうのはね、何と言うか…男のプライドが傷つく」

と、奏さんは言いました。

男のプライド。

性別のない私には、全く分からない感情ですね。

でも、奏さんにはきっとあるのでしょう。

それはきっと、私が先程「あのコモドドラゴンには負けない」と思ったのと、同じようなものなのでしょう。

「だから返す。はい」

「…ありがとうございます」

と、私は言いました。

そして、ナイルワニ代を返してもらいました。





…さて、それでは。

「見るものも見ましたし、帰りましょうか」

「そうだね」

と、奏さんは答えました。

『見聞広がるワールド 爬虫類の館』とは、これでおさらばです。

次、会うときは。

「…負けませんからね、コモドドラゴン…」

「…まだ言ってる…」

と、ポツリと奏さんは呟きました。
< 239 / 345 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop