アンドロイド・ニューワールド
「私は以前、友達作りをしようとして、前回の本を参考にトライしてみましたが」

「うん」

「見事に相手にされず、結局奏さんと交友を深めることになりました。それはそれで良かったのですが」

「うん、俺も良かった」

と、奏さんは言いました。

「そして、奏さんとお出かけすることを久露花局長と話し合ったとき、この際新規のお友達を増やすより、今いるお友達、つまり奏さんとの仲をもっと深めて…」

「うん」

「親友になったら良いのではないか、と判断しました」

と、私は言いました。

素晴らしい発想の転換だと、私は思います。

しかし。

「…俺は、あくまで友達ポジションなのか…」

と、奏さんは何故か、落胆したように言いました。

何故落ち込むのでしょう。

「奏さんは、私と親友は嫌ですか?」

「え?いや、別にそういう訳じゃないんだけど…。うん、よし。もっと長い目で見よう…。大丈夫。親友、俺もなりたいよ」

と、奏さんは言いました。

奏さんも賛成してくれました。良かったです。

「そこで私は、前述の『猿でも分かる!親友の作り方』を読みました」

「そうなんだ。それに何が書いてあったの?」

「週末に、一緒にお出かけすれば良いそうです」

「…」

と、何故か奏さんは無言でした。

「何かおかしなことを言いましたか?」

「…俺の記憶が間違ってなかったら、その本、確か『友達の作り方』のときも、同じこと書いてなかった?」

「書いてましたね」

「使い回してない?」

「さぁ。人間の交友関係は難しいですから、私にはよく分かりません。とにかく、本に書いてあることを実践するのみです」

「…多分それ、知り合い編でも恋人編で、同じこと書いてるよ…」

と、奏さんは小さく呟いていましたが。

それよりも。

「そんな訳で私は、また奏さんと週末にお出かけしたいと思います」

「うん」

「奏さんに異論はありませんか?」

「ないよ。瑠璃華さんの誘いなら、何でもOKだよ」

と、奏さんは言いました。

有り難いお言葉を頂戴しました。

奏さんの心は寛大ですね。

私に心はないので、広いのか狭いのか分かりませんが。

「今週末でも宜しいでしょうか?」

「良いよ。いつも暇してるから、俺」

「そうなんですか」

と、私は言いました。

実は、私も週末は特にやることがありません。

家にいても、お隣の夫婦喧嘩を聞かされるだけなので、よく外に出て人間観察をしています。

「何処に行くかは、もう決めてるの?」

と、奏さんはまたしても、とても良いことを聞いてくれました。
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