アンドロイド・ニューワールド
はいを三回も言われてしまいました。

「どうかしましたか?」

「ごめんね、瑠璃華さん。行き先の正式名称、もう一回言ってもらって良い?」 

と、奏さんは言いました。

あぁ、よく聞き取れなかったのですね。

ならばもう一度言いましょう。

「『見聞広がるワールド 深海魚水族館』です」

「そうか…。聞き間違いじゃなかったか…。そうなのか…」

と、奏さんはブツブツ呟いていました。

「やっぱり瑠璃華さんは瑠璃華さんだったか…」

と、奏さんはなおもブツブツ呟いていました。

私は私ですよ。当然です。 

「って言うか、その施設って、そんなチェーン店みたいに展開してたんだ…。うちの県内に…。知らなかった…」

と、奏さんはまだまだブツブツ呟いていました。

「…駄目なんですか?」

と、私は尋ねました。

奏さんがあまりにブツブツ呟くので、乗り気ではないのかと思ったのです。

しかし。

「いや、大丈夫…。一回約束したことだし。今更撤回はしないよ」

と、奏さんは言いました。

男に二言はない、という奴ですね。

男でも女でも、二言三言あっても良いと思うのですが。

「それに、瑠璃華さんがちゃんと瑠璃華さんで、むしろ安心した…」

と、奏さんはポツリと呟きました。

遠い目で。

理解不能な行為ですが、とにかく承諾を得られたようなので良かったです。
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