アンドロイド・ニューワールド
私といると、退屈しない?

それは褒め言葉なのでしょうか。それとも皮肉なのでしょうか。

あるいは、単なる感想?

分からないので、聞いてみることにしました。

「どういう意味ですか?」

「え?いや、深い意味はないけど…」

と、奏さんは答えました。

じゃあ、単なる感想ですね。

「瑠璃華さんといると、飽きないなぁって思って」

と、奏さんは言いました。

それまた、どういう意味ですか。

これも単なる感想なんでしょうか。

「だって瑠璃華さんに会うまでは、俺、週末にこんなところに出かけたりしなかったよ。学校でも、ずっと一人ぼっちで。浮いてたしさ」

と、奏さんは言いました。

成程。

「私と出会ってから、様々な体験をしたという意味ですね?」

「そうだよ」

と、奏さんは答えました。

成程、理解しました。

これまで自分の殻のうちに引きこもりがちだった奏さんを、私が外に引っ張り出したという意味ですね。

それは良いことなのでしょうか?

「奏さんは、引きこもってた方が良かったですか?」

「まさか。今の方がずっと良いよ。こうして瑠璃華さんと外に出て、学校でも、他のクラスメイトみたいに、当たり前のように友達と喋ったりして…」

「…」

「自分も普通の高校生なんだなって、初めて思うことが出来た」

と、奏さんは奇妙なことを言いました。

私にとっては、奏さんは最初から、他のクラスメイトと変わらない、普通の高校生だったのですが。

奏さんにとっては、そうではなかったんですか?

「前よりも、自分に自信が持てるようになった」

「そうですか」

「それら全部、瑠璃華さんのお陰なんだよ。瑠璃華さんが俺を、日陰の暗いところから引っ張り出してくれたから。全部瑠璃華さんのお陰なんだ」

と、奏さんは言いました。

唐突な自分語りですね。よくあることです。

久露花局長なんかが、たまに始めたりします。

「ありがとう。瑠璃華さんには、本当に感謝してるよ」

「そうですか。それはどういたしまして」

と、私は答えました。

自分では、特に何か、特別なことをした覚えはないのですが。

むしろ奏さんには、私の『人間交流プログラム』に付き合って頂いて、こちらが礼を言わなければならない立場と言いますか…。

すると。

「…だから」

と、奏さんは、車椅子を押す私に振り返って言いました。
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