アンドロイド・ニューワールド

すると。

「瑠璃華さん、どんなアートにしてもらう？」

と、奏さんは尋ねました。

どんな、とは如何に。

「こちらから指定出来るのですか？」

「うん。可能な限り、こちらの希望に沿って作ってくれるよ」

と、奏さんは答えました。

成程、こちらから注文をつけられるのですね。

「やっぱりハートマークにする？ほら、このメニューに載ってる写真みたいな、可愛い感じの、」

「ナスカの地上絵をお願いしましょう」

「…何で…？」

と、奏さんは困ったように聞きました。

何でと言われましても、特に理由はありません。

直感です。

コーヒーの上にナスカの地上絵…。

何だか、夢が膨らみませんか？

「つ、作ってくれるのかな。ナスカの地上絵…」

「駄目だったら、仕方ないのでムンクの叫びに変えてもらいましょう」

「…何でムンク…？」

と、奏さんは困ったように尋ねました。

「奏さんは、どんな模様にするんですか？」

「え、俺？俺は…そうだな…。やっぱり、定番の動物を、」

「ワニですね。分かりました。では店員さんを呼びましょう」

「何で？え、何で？」

と、奏さんは困惑していましたが。

私は片手を上げて、店員さんを呼びました。

店員さんは、すぐに来てくれました。

「この、ラテアートというのを二つお願いします」

「畏まりました。何か希望のアートはありますか？」

と、店員さんは片手に注文用紙、片手にペンを持って聞きました。

「彼にはワニをお願いします。ナイルワニが好ましいですね」

「え、な、ナイルワニ？」

と、店員さんは疑問符で答えました。

私の向かい側で、奏さんが「あわわわわわ…」みたいな顔をしていました。

何か困ったことでもあったのでしょうか。

「それから私は、ナスカの地上絵をお願いします」

「な、ナスカの地上絵！？」

と、店員さんは愕然としていました。

大丈夫でしょうか。

やっぱり、ハードルが高くて無理だと思ったのでしょうか。

「不可能ですか？」

「え？い、いや、あの、えぇと…。ちょ、ちょっと確認してきます」

と、店員さんは、一時キッチンの方に戻りました。

何の確認でしょうか。