アンドロイド・ニューワールド
「何か問題でもあったんでしょうかね?」

と、私は奏さんに尋ねました。

「う、うん…。あまりに奇天烈な注文が来たから、困惑してるんだと思うよ…」

と、奏さんは答えました。

奇天烈?何がですか?

「やはり、ナイルワニは難易度が高かったですかね?」

「ナスカの地上絵も大概だと思うけど」

「あ、店員さんが帰って来ましたよ」

と、私は言いました。

「お、お待たせしました」

と、店員さんは言いました。

「出来そうですか?」

「は、はい。一応…その、イメージとは違う出来になるかもしれませんが、それでも宜しいでしょうか?」

と、店員さんは律儀に言いました。

適当に頷いておいて、適当なものを出して、「はいこれナスカの地上絵ですよ」とか言ってくれても、別に構わなかったのですが。

そこは、お店側としてのプライドがあるのでしょうか。

「分かりました。それで構いませんよ」

と、私は言いました。

「あ、ありがとうございます。少々お時間頂くことになりますが…」

「えぇ、待ちますよ」

「ありがとうございます。では、丁寧にお作りしますので、しばらくお待ち下さい」

と、店員さんはお辞儀をしながら、相変わらず律儀に言いました。

わたわたとキッチンに帰っていく、店員さんの背中を見つめながら。

「律儀な方ですね」

「うん…。思いもよらない注文が来たと思ってるだろうね…」

「そうですか?植物やハートマークが出来るなら、ナスカの地上絵くらいお手の物では…?」

「何処から出てきたのさ、その発想は…」

と、奏さんは言いました。

何処から、と言われましても…。

「それは…動物、植物、ハートマークと来たら、あとはナスカの地上絵くらいしか見つかりません」

「…何故それらとナスカの地上絵が並んでるのか、俺には理解不能だよ…」

と、奏さんは言いました。

そうですか。

人間基準だと、そうなのかもしれませんね。
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