アンドロイド・ニューワールド
カンニングって、皆さんご存知でしょうか。

試験の際に、こっそり不正行為を行うことです。

具体的に言うと。

机の中にテキストを潜ませるとか、ペンケースの下にカンニングペーパーを仕込むとか、そういう行為ですね。

あるいは、事前に職員室等に忍び込み、模範解答や問題用紙を盗み、事前に問題の答えを暗記しておく、などの行為も、カンニングに当たります。

そして私は今、そのカンニングをしたのではないか?と、担任教師に疑われています。

正直に言って、とても驚きました。

私に心はありませんが、心外です。

まさか、私が不正行為をしたと疑われるとは。

「どうしてそう思われるのですか?」

と、私は聞きました。

質問に質問で返すのは愚かだと分かっていますが、まずは自分が疑われている理由を、先に知りたかったのです。

きっと佐賀来教師も、何かの理由があるから、私を糾弾しているのでしょうし。

すると。

「そんなの、自分で分かるでしょ?」

と、佐賀来教師は言いました。

質問を質問で返したら、更に質問されました。

質問合戦ですね。

私は、どんな勝負にも負けたくはないので。

ここまで来たら、徹底的に質問返しするとしましょう。

向こうが折れるまで。

「分からないから聞いているのでしょう?」

と、私は聞きました。

質問を質問で返し、更に質問されたのでまた質問しました。

頭の中が、質問でいっぱいです。

すると。

案外あっさりなことに、質問合戦は終わりました。

「全科目、全問正解。オール100点満点。こんな解答用紙を見たら、誰だってカンニングを疑うわ」

と、佐賀来教師は言いました。

成程。

とりあえず、質問合戦は私の勝ちですね。

そして今、私は良いことを聞きました。

「私、全問正解だったんですね。多分そうだろうとは思っていましたが」

「こんなこと有り得ないわ。事前に問題用紙を盗み出していたんでしょう?正直に言いなさい」

と、佐賀来教師は言いました。

成程。私は今、問題用紙窃盗犯の疑いをかけられているのですね。

そうだとしたら、この、佐賀来教師の疑り深そうな目にも、納得が出来ます。

「では正直に言いますが、私は問題用紙を盗み出したりはしていません」

と、私は答えました。

「じゃあ、カンニングペーパーを用意してたのね?」

「誤解なさっているようなので、はっきり言っておきますが…。私は今回の期末試験で、不正行為と認定されるような行為は、一切行っていません」

と、私は言いました。
 
ちゃんと、「今回の」を強調しておきましたよ。

前回までの試験問題は、こっそり学校のPCに侵入して、練習問題を作る際の参考にしましたが。

今回の試験については、全く事前情報はありませんでした。

それは確かです。

それなのに。

「じゃあ、素の学力で全科目満点だってこと?」

「そうなりますね」

「有り得ないわ。何か小細工をしたんでしょう。今正直に言えば、取りなしてあげることも出来るのよ」

と、佐賀来教師は言いました。

誰に何を取りなすのですか?

私は、一切不正行為は行っていないというのに。

あなた方は、『新世界アンドロイド』の記憶力を侮り過ぎています。
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