アンドロイド・ニューワールド
やってもいない悪事を責められるって、物凄く不快なんですね。

初めて知りました。

おまけに、話はすぐに終わるみたいなことを言っておきながら。

何だかんだ、話が長くなりつつありますね。

そのことにも、段々イライラしてきました。

これは、この感情は「怒り」ですね。知っています。

ならば、さっさと終わらせるとしましょう。

「私を糾弾するのなら、証拠を見せてください。『そんなの有り得ないから』などという、あなたの手前勝手な主観ではなくて、確かな証拠を提示してください」

と、私は言いました。

証拠もないのに、勝手なことを言わないでもらいたいですね。

私が潔白であることは、私自身がよく分かっているのですから。

この時間が、とてつもなく無駄に感じます。

「証拠って…それは…」

「証拠もないのに、疑ってるんですか?」

「…大体、おかしいじゃない。中間試験のときはからっきしだったのに、期末だけこんな…」

と、佐賀来教師は口ごもりながら言いました。

成程。確かに中間試験のときは、私はまるでやる気がありませんでしたからね。

それが突然気合を出して全問正解だったら、それは不正を疑うのも無理はない…とは思いますが。

しかし、「そんなの常識では有り得ない」だとか、「信じられない」だとかいう、非常に曖昧な理屈で。

私の不正行為を糾弾するのは、間違っていると判断します。

だって、そこにあなたの主観以外の証拠は、何もないのですから。

「私はいかなる不正行為も行っていません。それでも疑うと言うなら、今すぐ再試験を受けても良いですよ。また全問正解してみせますから」

と、私は言いました。

嘘ではありません。

この学校の試験のレベルは、『新世界アンドロイド』たる私にとっては、幼稚園児に行うテストのようなもの。

間違えようもありません。

「…そう。カンニングしてないなら良いけど…」

と、佐賀来教師は言いました。

何だか、全然信じてはいない顔ですね。

けれども証拠がないから、これ以上私の不正行為を糾弾する根拠もないのです。

本人が「してない」と言っており、またカンニングを行ったという確かな証拠も、持っていないのですから。

これ以上は何も言えませんよね。

それはそうでしょう。

「では、話はこれで終わりですね?」

と、私は聞きました。

しかし、佐賀来教師はなおも、疑わしそうな目でこちらを見つめ。

「…」

と、無言でこちらを見ていました。

何ですか。言いたいことがあるならはっきり…。

「…そういえば、あなたがよくつるんでる、緋村君も、この度凄く点数が上がってるんだけど」

と、佐賀来教師はポツリと言いました。

そうなんですか。

まぁ、それは当然でしょうね。

何せ、今回の期末試験は、二人の友情と、そしてナスカの地上絵とナイルワニの犠牲のもとに、為されたものですから。

つるんでる、という言い方は、何だか癪に障りますけど。

つるんでちゃ、何か悪いんですか。

と、思っていると。

「そういうのもね、疑われる原因なのよ」

と、佐賀来教師は意味不明なことを言いました。
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