アンドロイド・ニューワールド
「…どういう意味ですか?」

と、私は尋ねました。

本当に意味が分からなかったのです。

奏さんと同じく成績が良かったからといって、それが何か問題でも?

「だって、見たら分かるでしょ?彼、緋村君は、ずっとクラスで浮いてて…中等部の頃からそうだったのよ」

「それは知っています」

と、私は答えました。

相変わらず、先程から怒りがふつふつと込み上げてきます。

しかも、これから更に、私を苛立たせる方向に話が進んでいきそうな予感がするのですが。

私の気のせいでしょうか?
 
「あなた自身も、転入初日から変なことばかり言って、クラスから浮いてるって湯野さんから聞いたわ。それで、結局あぶれ者同士の緋村君とくっついたって」

と、佐賀来教師は言いました。

…何だか物凄く不快ですね。

湯野さんと言えば、絶縁宣言したあのクラス委員じゃないですか。

何故私と奏さんの友情の間に、彼女の名前が出てくるのですか?

あの人は関係ないでしょう。

大体あぶれ者なんて、教師の言う言葉ですか?

「それからも、体育の先生や化学の先生に、失礼なことを言ったそうね」

「…はい?」

と、私は聞き返しました。

私が体育と化学の教師に、何を礼を失するようなことを言ったんですか?

「今まで波風立てずに上手く授業を行えていたのに、あなたが来てからというもの、やりにくくて仕方ないそうよ。何でも、緋村君にだけ特権を与えろとか、特別扱いしろって迫ったそうじゃない」

と、佐賀来教師は言いました。

全く身に覚えがありませんが。

唯一思い当たる節があるとしたら、転入したばかりの頃、体育教師と化学教師のそれぞれに、啖呵を切ったことがありましたね。

それのことでしょうか。

え?あの二人、あのときのことを、そんな風に捉えていたんですか?

人間として、何一つ成長してないじゃないですか。

犬や猿ですら学習するというのに、何故高い知能を持った人間が、何の進歩もしていないんですか?

動物としておかしいです。

「特別扱いしろなんて言っていません。ハンディキャップを持つ生徒に対して、当然の配慮をお願いしただけです」

「それが特別扱いしろってことじゃないの。良い?障害があろうとなかろうと、生徒は皆平等なんだから。一人だけ特別扱いは出来ないの。運動会のときだって、一人だけあんな目立つことをして…。これまでは、皆平穏に過ごせてたのに、あれじゃうちのクラスだけ悪目立ちよ」

「…」

「緋村君だって、それが分かってるから、今まで波風立てずに遠慮してくれてたのに。それを壊すような真似をして…。で、今回は、全問正解なんて有り得ないことをして。こうも騒ぎばかり起こされたら困るわ」

と、佐賀来教師は溜息混じりに言いました。

何でしょう。

天気予報で言うなら、私の中の今の天候は。

非常に大荒れの模様です。

「もう少し大人しくしていられないの?あなたも緋村君も。全く、どうしてこんなことに、」

「伝統に従順、慈愛と博愛の精神を持ち、心身共に逞しく、自らの足で困難を打ち砕く、強い心を持つ生徒を育てる!!」

と、私は職員室中に響くような声で言いました。

「!?」

と、佐賀来教師のみならず、職員室にいた全ての教師一行が、こちらを振り返りました。

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