アンドロイド・ニューワールド
到着した駅からは、歩いて15分ほどのところに、目指す目的地があります。

そこまで歩きながら。

「全く…。何処の若い作業員が待ってるのかと思ったよ」

と、奏さんは愚痴りました。

「私のことですか?」

「そうだよ」

「ですが奏さん。今回のターゲットは植物なんですよ?植物の力を、甘く見てはいけません」

と、私は言いました。

奴らは時に、コンクリートの地面さえ押し砕いて、根を張り芽を出し、葉を茂らせるのです。

そんな底力を持つ植物を、甘く見てはいけないと思います。

おまけに植物園と言うなら、世界各国から、様々な植物が集まっている場所だと推測します。

中には、触ると痺れるとか、爛れるとか、毒を持つ植物もあるはずです。

川辺に普通に咲いている彼岸花にだって、毒があるんですから。

場合によっては、命に関わることもあるでしょう。

やはり、存分に備えておいて、損はないはずです。

しかし。

「大丈夫だよ。そういう危ない植物には触れないように、きっと柵がしてあるよ。全く、どんなサバイバル環境下で暮らしてきたの?瑠璃華さんは…」

「サバイバル?私が暮らしてきてのは、『Neo Sanctus Floralia』の第4局です」

と、私は答えました。

「そこには、ニシキヘビやナイルワニや、彼岸花が、日常的にあったの?」

と、奏さんは聞きました。

私は、『Neo Sanctus Floralia』第4局での生活を、思い返しました。

…。

「…ありませんでしたね」

「ほら」

と、奏さんは呆れたように言いました。

チョコレート菓子なら、いくらでもありましたが。

ナイルワニや彼岸花は、いませんでしたね。

しかし、それはそれ、これはこれというものです。

「万が一のこともあります。油断してはいけません。もしかしたら、サボテンが急速に巨大化し、人間を襲う可能性も…」

「…どんな映画の話…?」

と、奏さんは聞きました。

むむ、全く相手にしていませんね。

「奏さん。そんなことでは、過酷な自然環境では生き延びられませんよ。今回は私がいるので、巨大サボテンが襲ってきたとしても、あなたを守ってあげられますが。いざそのときになって、『やっぱり俺が間違ってました。巨大サボテンは危険でした』と謝っても、遅いんですからね?」

「大丈夫。そんな理由で俺が瑠璃華さんに謝る日は、恐らく絶対にないから」

と、奏さんは言いました。

「そもそも、何で巨大サボテンがいること前提なの…?」

「あ、着きましたよ奏さん。ここですね」

「…話を聞こうよ…」

と、奏さんは呟いていましたが。

私と奏さんは無事に、『見聞広がるワールド 自然の植物園』に到着しました。

さて、この中に、何が待ち受けているのやら。

胸が高鳴りますね。

あ、高鳴るような胸は、私にはないのですが。
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