アンドロイド・ニューワールド
チケットを買い、入園すると。

エントランスはとても広々としていて、あちこちにが花が咲き乱れていました。

奥に見えるのは、あれは噴水でしょうか。

花の咲き乱れる花壇の後ろに、大きな噴水。

そしてその前には、ハートマークのアーチが覆う、白いベンチが置かれ。

そこで、カップルがイチャイチャと、写真撮影に勤しんでいました。

…成程。

「…ダイナマイトを持ってくるべきでしたね」

「落ち着こう、瑠璃華さん。何処から来たの?そのリア充爆発しろ的思想は。やめよう?危険だから」

と、奏さんは私を止めました。

奏さんの制止がなければ、一線を越えていたかもしれません。危ないところでした。

それよりも。

「見たところ、危険そうな植物はありませんね」

と、私は周囲を見渡して言いました。

花壇を埋め尽くしているのは、パンジーやガーベラ、マリーゴールドなど。

当たり障りのない、そこらの家々の庭でも咲いているような花ばかりです。

何なら、スーパーマーケットにも売ってそうですね。

これなら、毒草や毒花の心配は要らないでしょう。

今のところは、ですが。

「綺麗だね、瑠璃華さん…」

「はい。しかし警戒してください。この花壇の隙間を縫って、ヘビやワニが潜んでいる可能性も…」

「うん。むしろ警戒されてるのは、およそ植物園に相応しくない格好をしてる、瑠璃華さんの方だから。大丈夫だと思うよ」

と、奏さんは言いました。

「これだけ広かったら、手入れも大変でしょうね」

「そうだね。冬になったら、ここ、イルミネーションもするらしいよ。そうなったらまた来てみたいね」

「冬の夜を狙ってくるとは…!非常に狡猾と言わざるを得ない手口です」

「…うん。相変わらず、色んな誤解してるね」

と、奏さんは呟きました。

どうやら、この広いエントランスに潜んでいる危険は、比較的低そうですね。

「では、この景色を眺めながら、先に進みましょう。大丈夫、何が待ち構えていても、必ず私が奏さんを守ってみせます」

「うん…ありがとう、頼もしいねー…」

と、奏さんは何やら棒読み口調で言いました。
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