アンドロイド・ニューワールド
いざ、私と奏さんは熱帯地域植物館に入館しました。

ちなみに、ここも順路に含まれているので、ここに入ったからといって、特別な料金が発生することはありません。

入園時のチケット代に含まれています。

良心的ですね。

しかし、そんな優しさに、私は騙されません。

最初に優しさを見せておいて、一気に急転直下、なんて。

詐欺師の常套手段ですからね。

どんな危険が待ち受けているやら、分かったものではありません。

ましてや、熱帯地域の植物は、この地域に住む人々にとっては、全く見慣れないものばかり。

綺麗な花には毒がある、という言葉もあります。

どんなに珍しくて綺麗でも、油断はしない方が良いでしょう。

気をつけなくては。

中に入ると、さすがに熱帯地域の植物が生息しているからか、何となく外より湿度が高いです。

「何だかジャングルみたいだね…」

「はい。気をつけてください奏さん。もしかしたら、ヘビやワニや、因縁深きコモドドラゴンが潜んでいる可能性も…!」

「…まだ根に持ってる…」

と、奏さんは呟いていましたが。

私は、身の危険を脅かすものが潜んでいないかと、きょろきょろと辺りを見渡し、警戒していました。

今のところ、そのような動物の気配はなさそうですね。

しかし、ここはいかにも、ヘビやトカゲが好きそうな気候です。

いつ出てきてもおかしくないでしょう。

やはり、気をつけるに越したことはありません。

「あ、見て瑠璃華さん。バナナの木だって」

「ニシキヘビですか!?」

「いや…バナナだけど…」

と、奏さんは言いました。

奏さんの視線の先には、確かにバナナの木が生えていました。

良かったです。無害そうですね。

「バナナの木って、こんな姿なんだ…。いつも、黄色い実の部分しか見たことないから、木を見たのは初めてだよ」

「そうですね」

私も、『Neo Sanctus Floralia』の図書室にあった図鑑で、写真で見たことしかありません。

実物は、こんな風なんですね。

更に。

「あ、こっちはパイナップルだって」

「果物多いですね」

と、私は言いました。

実だけなら、そこらのスーパーマーケットでも見つかりますが。

実際木に成っているところは、初めて見ますね。

すると。

「あ、こっちは花だよ。綺麗だね」

と、奏さんは指差しました。
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