アンドロイド・ニューワールド
「出ましたね、サボテン…!」

「あー…。出ちゃったかー…。瑠璃華さんのターゲット…」

「ここで会ったが約500年目、いずれ戦う宿命だと思っていました」

「結構長い間待ってたんだね」

「その刺々しい体躯、毒々しく分厚い鋸歯…実に好戦的な植物です。やれるものならやってみろ、と挑発されている気分です」

「好戦的な植物って…凄いパワーワードだな…」

「しかも見てください。花まで咲かせている奴もいますよ。生意気にも程があります」

「花咲いてたら生意気なの?」

「これは危険植物です…。決して近寄ってはいけません」

「うん、でもあそこにいるカップルは、思いっきりサボテン見てるよ?写真まで撮って」

「あの二人は爆発するから良いんです」

「…勝手に爆破しないであげて…」

と、奏さんは言いました。

奏さんは優しいから、情けをかけてあげるかもしれませんが。

私は、見境なく敵に塩を送るつもりはありません。

ん?しかしこの場合、植物が相手なので、塩を送るのは有効なのでは?

と、考えていると。

「大丈夫だよ瑠璃華さん。サボテンって言っても、俺達の半分の背丈もないよ。襲われたりしないって」

と、奏さんは言いました。

非常に楽観的な思考と言わざるを得ません。

その油断が、命取りになるのです。

どんな浅瀬でも、溺死者が出るように。

膝丈のサボテンでも、人を殺せるかもしれません。

「分かりませんよ。いきなり巨大化して、私達を攻撃してくる可能性があります」

「…瑠璃華さん、何かそんな…映画でも見たの?」

「はい。『Neo Sanctus Floralia』にいたとき、『巨大サボテン襲来』という映画を見たことがあります」

「…絶対その映画のせいだな…」

「巨大化すれば、サボテンは私達を追ってくることも出来ます。急いで逃げましょう」

「あのカップルには?逃げるように言わなくて良いの?」

「あの二人は爆発するから良いんです」

「…可哀想…」

と、奏さんは呟いていましたが。

私はサボテンゾーンを、急いで抜け出しました。

向かう先に、安全圏があると信じて。
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