アンドロイド・ニューワールド
サボテンの脅威から逃れ。

私と奏さんは、ようやく熱帯地域植物館から脱出しました。

お互い無傷です。

無事に、再び陽の光を浴びることが出来て、良かったです。

猛獣が眠る檻の中を横断した気分ですね。

さて、それはさておき。

「ん?次もまた建物がありますね。何でしょう?」

と、私は聞きました。

「さっきの植物館よりは小さいね。何だろう?人だかり出来てる」

「あ、さっきのカップルもいますね…。まだ爆発してなかったんですか」

「…何か恨みでもあるの…?」

「とりあえず、行ってみましょう」

と、私は言いました。

奏さんと共に、その人だかりの出来た建物に向かうと。

そこには、『青いバラ記念館』という看板が立っていました。

青いバラ?

『Neo Sanctus Floralia』のエンブレムでもありますね。

「あ、これ聞いたことある。青いバラを作るのって難しくて、全国でもほとんど存在しないらしいけど…」

「その貴重な一本が、ここに展示されてるということですか」

「そうみたいだね」

と、奏さんは言いました。

二人で建物の中に入り、人だかりの出来た中央付近に向かうと。

確かにそこには、可憐に咲く青いバラがありました。

たった一本なのですが、その可憐な青い色のせいか、威厳を感じさせます。

「凄っ…。綺麗だね」

「はい。私も、実物は初めて見ましたね」

と、私は言いました。

柵の前には、この一本の青いバラを寄贈するに当たって、記念として送られた石碑と。

そして、これまた記念として、本物の青いバラに負けないくらいの存在感と輝きを持つ、青い薔薇のブローチが、ガラスケースに飾られていました。

本物のバラは当然綺麗ですが。

このブローチもブローチで、光沢があってとても美しいですね。

『Neo Sanctus Floralia』にも、同じものがあります。

これも何かの因果でしょうか。

「…奏さん、青いバラの花言葉ってご存知ですか?」

「え?青いバラの花言葉…。何だろう?赤は愛の証、黄色は…嫉妬だっけ?青は…何なんだろう?悲しみ…とか?」

「いいえ、違います」

と、私は言いました。

青いバラは、『Neo Sanctus Floralia』のエンブレム。

だから私は、この世に生まれたときから、この花の意味を知っています。

「青いバラの花言葉は、不可能。そして…奇跡です」

と、私は言いました。

過去の偉人達もまた、この儚い花の意味を知っていたからこそ。

この花を、自らを示す証にしたのでしょう。

「へぇ…そうなんだ。何だか相反する意味だけど…。勉強になるね」

「えぇ。これを見れただけでも、今日ここに来た甲斐があります」

「うん。本物の青いバラなんて、滅多に見る機会ないもんね」

と、奏さんは言いました。
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