アンドロイド・ニューワールド
とても貴重なものを見た後。

私と奏さんは、お土産コーナーに向かいました。

最早恒例ですね。

「瑠璃華さん、またキーホルダーでしょ?折角だし、この青いバラの…」

「私はサボテンのキーホルダーにするので、奏さんはウツボカズラにしましょう」

「…何となく分かってはいたけど…。俺の…選択権って…」

と、奏さんは呟いていましたが。

やがて、諦めたように顔を上げました。

そして。

「瑠璃華さん、折角だから、青いバラのキーホルダーも買っていこうよ。俺が出すから」

「え?」

「お互い初めて青いバラを見た記念に。どう?」

と、奏さんは聞きました。

青いバラを見た記念に…ですか。

しかも二人で同じものを買うということは、それって。

友達同士でお揃い、ってことですよね?

確か『猿でも分かる!親友の作り方』にも書いてありました。

二人でお揃いのアイテムを持つこと、と。

成程、それは良い案かもしれません。

「分かりました。ではお揃いにしましょう」

「ありがとう。じゃあ買ってくる」

「私の分は、私が出しますよ」

と、私は言いました。

お財布を出しながら。

しかし。

「ううん、大丈夫。今回は俺が誘ったんだし、それに瑠璃華さんには、いつも車椅子押してもらったり、期末試験のときにも、俺用にテキスト作ったりしてくれたから。そのお礼」

「いえ、その程度、お礼をされるようなことでは…」

「いや、これは下らない男のプライドだから。そうさせて」

と、奏さんは強引に言い切りました。

男のプライド…前にも言っていましたね。

奏さんにとっては、大事なことなのでしょう。

今までのキーホルダーは、お互い割り勘をしていたのに。

今回の青バラだけは、プレゼントされてしまいました。

何だか申し訳ない気もしますが…。

ここは、奏さんの気持ちを尊重した方が良いと判断しました。

「はい、瑠璃華さん。これ」

と、奏さんは会計を済ませて、青いバラのキーホルダーを手渡してくれました。

全く同じキーホルダーを、奏さんも手のひらに握っていました。

これで、お揃いですね。

「ありがとうございます」

「どういたしまして」

と、奏さんは言いました。

これで、累計キーホルダーの個数は、4個。

一つ500円程度の、ありふれたキーホルダーですが。

私と奏さんにとっては、とても貴重な、友情の証となることでしょう。
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