アンドロイド・ニューワールド
そして、その落ち込みが、プレーにも影響を及ぼしているようで。

今日の奏さんは、イマイチ集中力に欠けるようです。

何度かラリーを続けてから、私は打ち返されたシャトルを、手のひらで掴みました。

「どうしたんですか?奏さん」

と、私は聞きました。

「今日はスマッシュにキレがないですね。体調が優れないのですか?」

「え、それは…。…うん、体調は…あんまり良くないね」

と、奏さんは答えました。

やはりそうなんですか。

「なら、早く言ってくだされば良かったのに。今日の部活はお休みして、ゆっくり…」

「…」

「…大丈夫ですか?」

と、私は聞きました。

何だか奏さんの顔が、青ざめているように見えたからです。

親友のそのような顔は、見たくありません。

「…あのさ、瑠璃華さん」

と、奏さんは言いました。

「はい、何でしょう」

「俺と、瑠璃華さんは…。瑠璃華さんが転入してきた最初の頃から、ずっと…何かにつけて、一緒にいるけどさ」

と、奏さんは言いました。

一体何の話でしょう。

「はい。それがどう…」

「それって、俺と瑠璃華さんが『友達』だから?ハンディキャップのある俺に、気を遣ってくれてたから?」
 
と、奏さんは聞きました。

…本当にどうしたのでしょう。

いきなり、そんなことを。

「お互いクラスで浮いてて、余り物同士でくっつくしかないと思ったから?俺はあくまで…瑠璃華さんの…その、『人間交流プログラム』とかいう…それの、実験台みたいなものだったの?」

と、奏さんは聞きました。

実験台…って。

「…奏さんは、私の親友ですよ?」

「うん。でもそれは…『人間交流プログラム』とかいう計画の…一環なんだよね?そうじゃなかったら、別に俺じゃなくても構わなかったってこと…?」

と、奏さんは聞きました。

奏さんでなくても、構わなかった…?

思い返してみれば、確かにそうかもしれません。

私はあくまで、『人間交流プログラム』の一環として、この星屑学園に来て。

『人間交流プログラム』の一環として、友達作りに勤しみ。

最初は、湯野さんと悪癖お友達一行と、仲良くなろうと試みましたが。

それが失敗したので、他のクラスメイトに声をかけましたが、軒並み断られ。

唯一私を拒まなかったのが、奏さんです。

だから今に至るまで、奏さんと仲良くしています。

だって、奏さんは私の親友ですから。

人間の感情を学ぶという、『人間交流プログラム』の目的を果たす為に、必要な存在でしたから。

別に奏さんでなくても、他の人間でも構いませんでした。

私の、『人間交流プログラム』の目的を果たす為なら。

「…そうですね。奏さんでなくても、『人間交流プログラム』の目的を果たせるなら、他の誰でも構いませんでした」

と、私は答えました。

何でしょう。この言葉は。

言った瞬間に、胸の奥の方がチリチリと、また異物感を感じます。

事実を言っただけなのに、どうしてこんな…。
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