アンドロイド・ニューワールド
自宅に帰ってからも、その不思議な喪失感は消えませんでした。

何故こんな気持ちになるのでしょう。

この気持ちの名前は何なんでしょうか。

奏さんなら知っているでしょうか?

生徒会長なら?

『人間交流プログラム』を更に発展させることが出来て、喜ばしいはずなのに。

何故私は、喜びとは対極のところにいるのでしょう?

どうにも気分が優れなくて、私はその日の放課後。

ノートパソコンを開けて、久露花局長に連絡を取りました。

この不愉快な気分をどうしたら良いのか、聞いてみようと思ったのです。




『瑠璃華ちゃん、やっほー。どうしたの?』

と、久露花局長は言いました。

突然私から、定期連絡以外の連絡が来たので、驚いているかと思いましたが。

相変わらず局長は、片手にアーモンドチョコレートの箱を持って、チョコレートをもぐもぐしていました。

余裕ですね。

「久露花局長…」

『何々?何かあったの?』

「はい。私は今日、恋人が出来ました」

『ぶべらはぁっ!』

と、局長は奇声をあげました。

同時に、口に含んでいたチョコレートが飛び出し、画面を汚しました。

控えめに言って、とても汚いですね。

『きょ、局長大丈夫ですか?』

『翠ちゃんも大丈夫!?』

『わ、私はっ…だ、大丈夫じゃあります!』

『そっか!私も大丈夫でありますん!』

と、局長と副局長は言いました。

お二人共、言語がおかしくなっているのですが。

多分、大丈夫ではないのでしょう。

この二人が、ここまで慌てているのを見るのは、初めてかもしれません。

『ふ、ふぅ…。死ぬかと思った…』

と、局長は画面をハンカチで拭きながら言いました。

ようやく、少し落ち着いたようです。

そして。

『そ、そっか…。瑠璃華ちゃんに恋人かぁ…』

と、局長はしみじみと言いました。

何故か嬉しそうですね。
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