アンドロイド・ニューワールド
「友達の有無が、一番重要な質問なのですか?」

『それはそうだよ。友達は大事だよ?友達と仲良くすることによって、君は人としての感情を得ることが出来る』 

と、局長は言いました。

成程、理解しました。

友人がいれば、より『人間交流プログラム』がスムーズに進行する、という意味で、友人の有無を聞いてきたのですね。

『それにほら、友達がいたら楽しいよ〜?青春にお友達は付き物!だよね、翠ちゃん』

『え、そ、そうですかね…?まぁ、居るに越したことはないですかね…』

と、局長と副局長が言いました。

副局長は若干戸惑っていますが、彼女は学生時代、友人はいたのでしょうか。

ところで。

「友人の有無が、プログラム進行に重要なポイントだと理解しました…が」

『が?』

「友達の定義は何でしょう。また、友達と認定する条件を教えて下さい」

『…』

私の質問に、局長はポカンとしていました。

私は、何かおかしなことを聞いたのでしょうか。

医師が、明確に決められた症状が認められた場合にのみ、患者の病名を診断するように。

友達というものもまた、何かしらの条件を満たしたときのみ、友達と認定することが出来るのでしょう。

もし、友達の条件が、「一度でも話したことがある相手」なのだとしたら。

私は、今日出会ったほぼ全ての人間と、友達になったことになります。

しかし、友達の条件がもっと厳しく、「お互いにお互いのことを知り尽くし、互いの思考や感情まで、完璧に把握している相手」なのだとしたら。

私には、とてもではないですが友人作りは出来そうにありません。

と言うか、人間にとっても非常に困難なのでは?

『いや、あのね…。そういうのじゃない。そういうのじゃないんだよ、瑠璃華ちゃん』

と、局長は困ったように答えました。

「そういうの、とは具体的に何を指すのでしょうか」

『それはその…。友達っていうのはね、そんな、条件を満たしたらなれるものって訳じゃなくて…』

「…?理解不能です。条件がないなら、誰もが友達であり、誰も友達でないというロジックが成立してしまいます」

人類皆友達、ということでしょうか?

だとしたら、わざわざ局長が「友達は出来たのか」と質問する意図が分かりません。

『それはまぁ…。条件がないという訳ではないかもしれないね。何て言うかその…。友達っていうのはね…。うーん…』

と、局長は言葉を濁しました。

局長自身も、よく分かっていないのでしょうか。

局長が分からないことを、私が理解出来るとは思えません。

…そうだ、良いことを思いつきました。

「条件を言葉にするのが難しいなら、相手に確認してみるのはどうでしょう」

と、私は言いました。

『へ?』

「つまり、クラスメイト全員に、『あなたと私は友人ですか?』と尋ねて回るのです。その際、イエスの返事をもらえればその人は友達、ノーの返事だった場合は非友人ということで、」

『違う。そうじゃない』

と、局長は言いました。

とても良い提案だったつもりなのですが、即刻却下されてしまいました。

友人関係とは、どうやら難しいものです。

『そうじゃない。そうじゃないんだよなぁ〜…。何て言ったら良いのかなぁ〜』

と、局長は頭を悩ませていました。
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