アンドロイド・ニューワールド
『人間は、自分の経験した感情しか覚えることは出来ない。ならば『人型聖宝具』の彼らにも、様々な感情を経験させる必要がある。その為に他の人間を傷つけてしまうことになっても…それは、傷つけてしまった彼らの責任だ。彼らが背負うべき罪だ』
「…」
『そうすれば、彼らはいずれ、痛みを持って知ることになる。人を傷つけることは、自分を傷つけることにもなるのだと。罪悪感という感情がどんなものなのかを。そうして学んでいくのだ。人工知能で測ったものではなく、本物の人間の感情を』
…成程ね。
だから、碧衣君を放置しているのか。
『そこに、我々が介入してはいけない。彼らが自分で決め、自分で責任を負って行う行為に、我々が口を挟んで誘導していたのでは…。彼らはいつまでも、ただ命令に従うだけのアンドロイドのままだ』
「…そうかもしれないね」
『あまりに過ぎた行為なら止めるが…。自分は、1110番を止めるつもりはない。自分に好かれる為に他人を利用するなど、『Neo Sanctus Floralia』にいた頃は、一度も行ったことがなかった。外に出て、初めて他人を利用することを学んだのだ』
『人間交流プログラム』を行って初めて、碧衣君は。
紺奈局長に好かれる為に、今までにない行動を始めた。
それはつまり、人間と交わって、関わって、学習したということだ。
『その行為が、善であろうと悪であろうと…。人間なら誰しも、善行も悪行も行う。そうして、善悪の区別をつけていく。彼らもまた同じ。善と悪を行い、その結果を知って、学んでいくのだ。こればかりは、我々が教えることは出来ない』
「…そうだね」
教えられたら、こんな苦労はしてないだろうからね。
すると、紺奈局長は一息置いて。
『…と、いうのは自分が考えた持論でしかない。久露花局長が1027番を止めた方が良いと判断するなら、それでも構わないだろう』
「…」
『ましてやそちらには、元々仲の良い異性がいたのだろう?1110番の場合とは、状況が違う』
そうだね。
奏君が、どれくらい瑠璃華ちゃんを本気で思っていたのかは、憶測するしかないことだけど。
本当に瑠璃華ちゃんを好きだったのなら、酷く傷つけてしまうだろう。
『久露花局長の英断に期待する…としか言えない。申し訳ないが』
「ううん…大丈夫。私の方こそ…自分がいかに浅はかだったか、気づいたから」
私は瑠璃華ちゃんに、人間の感情を学ぶように言っておきながら。
勝手に作った瑠璃華ちゃんの理想像を、彼女に押し付けているだけだったのだ。
幼稚園の子供にするように、手綱を引いて、何から何まで指示するのでは。
わざわざ『Neo Sanctus Floralia』の外に出し、人間の世界に交わらせた意味がない。
瑠璃華ちゃんには瑠璃華ちゃんの考えがあり、彼女はその考えに則って行動しているのだ。
そしてその行動に対する責任は、他でもない瑠璃華ちゃん自身が背負っているのだから。
そこに、私が口を挟む権利はない。
駄目なんだ。いつまでも子供扱いじゃ。
彼女の意志を、尊重しなくては。
「…ありがとう。紺奈局長。責めるような言い方をして悪かったね」
『いや…。『人間交流プログラム』を考案したのは自分だ。何かあれば、何でも相談してくれれば良い』
「…助かるよ、本当に」
そう言って、私は紺奈局長との通信を終わりにした。
「…」
『そうすれば、彼らはいずれ、痛みを持って知ることになる。人を傷つけることは、自分を傷つけることにもなるのだと。罪悪感という感情がどんなものなのかを。そうして学んでいくのだ。人工知能で測ったものではなく、本物の人間の感情を』
…成程ね。
だから、碧衣君を放置しているのか。
『そこに、我々が介入してはいけない。彼らが自分で決め、自分で責任を負って行う行為に、我々が口を挟んで誘導していたのでは…。彼らはいつまでも、ただ命令に従うだけのアンドロイドのままだ』
「…そうかもしれないね」
『あまりに過ぎた行為なら止めるが…。自分は、1110番を止めるつもりはない。自分に好かれる為に他人を利用するなど、『Neo Sanctus Floralia』にいた頃は、一度も行ったことがなかった。外に出て、初めて他人を利用することを学んだのだ』
『人間交流プログラム』を行って初めて、碧衣君は。
紺奈局長に好かれる為に、今までにない行動を始めた。
それはつまり、人間と交わって、関わって、学習したということだ。
『その行為が、善であろうと悪であろうと…。人間なら誰しも、善行も悪行も行う。そうして、善悪の区別をつけていく。彼らもまた同じ。善と悪を行い、その結果を知って、学んでいくのだ。こればかりは、我々が教えることは出来ない』
「…そうだね」
教えられたら、こんな苦労はしてないだろうからね。
すると、紺奈局長は一息置いて。
『…と、いうのは自分が考えた持論でしかない。久露花局長が1027番を止めた方が良いと判断するなら、それでも構わないだろう』
「…」
『ましてやそちらには、元々仲の良い異性がいたのだろう?1110番の場合とは、状況が違う』
そうだね。
奏君が、どれくらい瑠璃華ちゃんを本気で思っていたのかは、憶測するしかないことだけど。
本当に瑠璃華ちゃんを好きだったのなら、酷く傷つけてしまうだろう。
『久露花局長の英断に期待する…としか言えない。申し訳ないが』
「ううん…大丈夫。私の方こそ…自分がいかに浅はかだったか、気づいたから」
私は瑠璃華ちゃんに、人間の感情を学ぶように言っておきながら。
勝手に作った瑠璃華ちゃんの理想像を、彼女に押し付けているだけだったのだ。
幼稚園の子供にするように、手綱を引いて、何から何まで指示するのでは。
わざわざ『Neo Sanctus Floralia』の外に出し、人間の世界に交わらせた意味がない。
瑠璃華ちゃんには瑠璃華ちゃんの考えがあり、彼女はその考えに則って行動しているのだ。
そしてその行動に対する責任は、他でもない瑠璃華ちゃん自身が背負っているのだから。
そこに、私が口を挟む権利はない。
駄目なんだ。いつまでも子供扱いじゃ。
彼女の意志を、尊重しなくては。
「…ありがとう。紺奈局長。責めるような言い方をして悪かったね」
『いや…。『人間交流プログラム』を考案したのは自分だ。何かあれば、何でも相談してくれれば良い』
「…助かるよ、本当に」
そう言って、私は紺奈局長との通信を終わりにした。