アンドロイド・ニューワールド
分からないことだらけで、頭がいっぱいでも。
時間は誰にも等しく、残酷に流れていきます。
まず、昼休み。
いつもなら、奏さんとご一緒する時間です。
しかし当然のことながら、私は奏さんに接近禁止命令が出されているので、近寄れません。
仕方がないので、私は自分の席で、一人ぼっちで昼食です。
奏さんの方をチラリと見ると、彼も彼で、一人で昼食のようです。
…おかしな話です。
お互い一人ぼっちで、なら一人ぼっち同士が一緒になれば、二人になれるのに。
敢えて奏さんは、お互い一人でいるままの方を選ぶのです。
…全く以て、理解不能です。
折角今日は、通学途中に、ベーグルサンドなるものを買ってきたのに。
何の感想も伝えられません。
…?
私は、自分が考えたことに疑問を抱きました。
ベーグルサンドの感想など、別に誰に伝えるべき情報ではないのでは?
それなのに何故私は今、ベーグルサンドの感想を、誰かに伝えたいと思ったのでしょう?
…摩訶不思議な現象です。
これまで、私自身の気持ちや感想など、口に出すべきものではないと思っていたのに。
だって、私が何を思い、何を考えようと、他人にとってはどうでも良いことじゃないですか?
それなのに私は、無意識に、自分の考えを誰かに伝えたい、と思っていたのです。
私はいつの間に、こんなに変わってしまったのでしょう?
これは、『人間交流プログラム』の成果なのでしょうか?
などと、悶々と考えていると。
近くの席で、相変わらずグループを形成している、例の湯野さんと悪癖お友達一行のひそひそ声が聞こえてきました。
「ほら、見てよ。いつも仲良しこよししてたのが、今日は別々だよ」
「本当。幽霊君なんて、あからさまに落ち込んじゃってるしさ。馬鹿みたい」
「だよね。ちょっと優しくしてもらったからって、調子乗ってたんでしょ。良い気味」
と、湯野さんと悪癖お友達一行は言いました。
彼女達は、聞こえていないと思って言っているのでしょうが。
『新世界アンドロイド』の集音性能は、人間のそれとは段違いなので。
とてもよく聞こえています。
奏さんを、幽霊呼ばわりしているのは気に入りませんが。
それより、気になるのは。
…落ち込んでる?奏さんが?
奏さんは今、落ち込んでるんですか?
私は、チラリと奏さんの方を見ました。
彼は一人で、俯き気味に視線を下げ、一人でのろのろと菓子パンに齧りついています。
…確かに、落ち込んでいるように見えますが。
それは、私のせいなのでしょうか?
すると。
「それにしても、あの生徒会長が、電波ちゃんを選ぶとは思わなかった」
「だよね〜!それ本当ショックだった」
「中二病拗らせた電波の癖に、生徒会長の彼女になるとかキモい」
と、湯野さんと悪癖お友達一行は言いました。
今度は、私のことを愚痴っていますね。
不思議と、先程奏さんのことを話題にしていたときは、苛立ちましたが。
私のことを話題にされても、大して何とも思いません。
キモいって、私知ってますよ。
気持ち良いの略称でしょう?
だとすると、褒めてくださってるのでしょうか。
それにしては、口調が刺々しい気がしますが。
「まぁでも、今だけだよ。生徒会長も、電波ちゃんが手に負えない中二病拗らせてるって知ったら、すぐ嫌いになるでしょ」
「それね。電波ちゃんなんて、初めて、あの足手まといの緋村の相手を出来た、変わり者だもん」
「そうそう。大体あの幽霊君、最近調子乗り過ぎだもん。知ってる?放課後に勝手に体育館使って、なんかやってたらしいよ」
「え、マジ?」
「マジで。本当迷惑だよね。緋村といい電波ちゃんといい、邪魔だからどっか行ってくれれば良いのに」
と、湯野さんと悪癖お友達一行は言いました。
それを聞いたとき、私は一時、私の中に巣食っていた喪失感を忘れ。
あの感情、「怒り」を覚えました。
そして、ほとんど脊髄反射のごとく、立ち上がらずにはいられませんでした。
時間は誰にも等しく、残酷に流れていきます。
まず、昼休み。
いつもなら、奏さんとご一緒する時間です。
しかし当然のことながら、私は奏さんに接近禁止命令が出されているので、近寄れません。
仕方がないので、私は自分の席で、一人ぼっちで昼食です。
奏さんの方をチラリと見ると、彼も彼で、一人で昼食のようです。
…おかしな話です。
お互い一人ぼっちで、なら一人ぼっち同士が一緒になれば、二人になれるのに。
敢えて奏さんは、お互い一人でいるままの方を選ぶのです。
…全く以て、理解不能です。
折角今日は、通学途中に、ベーグルサンドなるものを買ってきたのに。
何の感想も伝えられません。
…?
私は、自分が考えたことに疑問を抱きました。
ベーグルサンドの感想など、別に誰に伝えるべき情報ではないのでは?
それなのに何故私は今、ベーグルサンドの感想を、誰かに伝えたいと思ったのでしょう?
…摩訶不思議な現象です。
これまで、私自身の気持ちや感想など、口に出すべきものではないと思っていたのに。
だって、私が何を思い、何を考えようと、他人にとってはどうでも良いことじゃないですか?
それなのに私は、無意識に、自分の考えを誰かに伝えたい、と思っていたのです。
私はいつの間に、こんなに変わってしまったのでしょう?
これは、『人間交流プログラム』の成果なのでしょうか?
などと、悶々と考えていると。
近くの席で、相変わらずグループを形成している、例の湯野さんと悪癖お友達一行のひそひそ声が聞こえてきました。
「ほら、見てよ。いつも仲良しこよししてたのが、今日は別々だよ」
「本当。幽霊君なんて、あからさまに落ち込んじゃってるしさ。馬鹿みたい」
「だよね。ちょっと優しくしてもらったからって、調子乗ってたんでしょ。良い気味」
と、湯野さんと悪癖お友達一行は言いました。
彼女達は、聞こえていないと思って言っているのでしょうが。
『新世界アンドロイド』の集音性能は、人間のそれとは段違いなので。
とてもよく聞こえています。
奏さんを、幽霊呼ばわりしているのは気に入りませんが。
それより、気になるのは。
…落ち込んでる?奏さんが?
奏さんは今、落ち込んでるんですか?
私は、チラリと奏さんの方を見ました。
彼は一人で、俯き気味に視線を下げ、一人でのろのろと菓子パンに齧りついています。
…確かに、落ち込んでいるように見えますが。
それは、私のせいなのでしょうか?
すると。
「それにしても、あの生徒会長が、電波ちゃんを選ぶとは思わなかった」
「だよね〜!それ本当ショックだった」
「中二病拗らせた電波の癖に、生徒会長の彼女になるとかキモい」
と、湯野さんと悪癖お友達一行は言いました。
今度は、私のことを愚痴っていますね。
不思議と、先程奏さんのことを話題にしていたときは、苛立ちましたが。
私のことを話題にされても、大して何とも思いません。
キモいって、私知ってますよ。
気持ち良いの略称でしょう?
だとすると、褒めてくださってるのでしょうか。
それにしては、口調が刺々しい気がしますが。
「まぁでも、今だけだよ。生徒会長も、電波ちゃんが手に負えない中二病拗らせてるって知ったら、すぐ嫌いになるでしょ」
「それね。電波ちゃんなんて、初めて、あの足手まといの緋村の相手を出来た、変わり者だもん」
「そうそう。大体あの幽霊君、最近調子乗り過ぎだもん。知ってる?放課後に勝手に体育館使って、なんかやってたらしいよ」
「え、マジ?」
「マジで。本当迷惑だよね。緋村といい電波ちゃんといい、邪魔だからどっか行ってくれれば良いのに」
と、湯野さんと悪癖お友達一行は言いました。
それを聞いたとき、私は一時、私の中に巣食っていた喪失感を忘れ。
あの感情、「怒り」を覚えました。
そして、ほとんど脊髄反射のごとく、立ち上がらずにはいられませんでした。