アンドロイド・ニューワールド
一緒に帰ると言っていたので、文字通り一緒に帰るだけかと思っていたのですが。

意外なことに。

「久露花さん、何処か寄って帰らない?」

と、生徒会長は言いました。

何処かに寄って帰る…?

「…スーパーマーケットとかですか?」

「え?いや…喫茶店とか…」

と、生徒会長は言いました。

あぁ、喫茶店ですね。

「久露花さん、何処かおすすめの場所知ってる?」

と、生徒会長は聞きました。

おすすめの喫茶店…ですか。

私が『人間交流プログラム』を始めてから、行ったことのある喫茶店は二箇所。

いずれも、奏さんと行った場所です。

まずは、紅茶が美味しいという、店員さんの気遣いの優しいお店。

そしてもう一つは、奏さんが住む施設の近くにある、ラテアートのお店。

私はどちらでも良いのですが、何となく、今は奏さんが住んでいる施設の近くには、近寄り難い気がします。

放っておいてくれと言われた以上、万が一にも鉢合わせしそうな場所は、避けた方が賢明でしょう。

だとすると、前者の、紅茶のお店ですね。

「紅茶の美味しいお店を知ってますよ」

と、私は言いました。

お店のオリジナルブレンドと、フレンチトーストがおすすめなのだと、奏さんが言っていましたね。

しかし。

「え、紅茶かぁ…。俺、紅茶よりコーヒーの方が好きなんだよね」

と、生徒会長は後頭部をポリポリと掻きながら、苦笑いで言いました。 

そうなんですか。

となると、後者のラテアートのお店になってしまいます。

それは避けたいですね。

ならば…。

「生徒会長のおすすめのお店を教えてください。そこにしますから」

「ほんと?じゃあ、今日は俺のおすすめの喫茶店に案内するよ」

と、生徒会長は人の良い笑顔を浮かべて言いました。
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