アンドロイド・ニューワールド
「で、これは何かあると思って、探ってたんですよ。紺奈局長の周辺とか」

「そうなんですか」

「そうしたら、こっそり侵入した紺奈局長のPCから、第2局との通信履歴が見つかりました。これは間違いなく瑠璃華さん絡みだなと思って、ちょっとストーカーしてみました」

「成程、そういうことでしたか」

と、私は言いました。

我々にはステルス機能がありますし、集音性能も高いですから。

ストーカーにはもってこいですよね。
 
「で、あの人、何なんですか?」

と、碧衣さんは聞きました。

「私の恋人です」

「え?あの、いかにも『私人畜無害ですよ』みたいな顔をした、クソ生意気そうな優男が恋人?」

と、碧衣さんは言いました。

色々と酷い言い方ですが。

碧衣さんの好みの男性像、つまり紺奈局長のことですが。

確かに紺奈局長と比べたら、全然威厳と貫禄が違いますよね。

「センスないですね、瑠璃華さんって」

「そうですかね」

「あんな奴にするなら、まだ前の、車椅子の男子生徒の方が良かったのに。何で彼は捨てたんですか?」

と、碧衣さんは聞きました。

「私は何も…彼を捨てた訳では…」

と、私は言いました。

どちらかと言うと、私が捨てられた側のように思えるのですが。

「…ふーん…」

と、碧衣さんは言いました。

そして。

「…で、あなたはそれが正しい選択だと思ってるんですか?」

と、碧衣さんは聞きました。

「…それは…どういう意味ですか?」

と、私は聞きました。

私は、正しい選択をしたはずです。

それは誰の目から見ても、明らかなはず。

それなのに、どうして私が正しい選択をしたのかどうか、改めて聞くのでしょうか。

「あ、気づいてないんですか?」

と、碧衣さんは聞きました。

「あなたは何を知ってるんですか?」

と、逆に私は聞きました。

しかし。

「いえ?別に」

と、碧衣さんは言いました。

「ただ…僕が知ってるのは、僕達が思ってるよりずっと、人間の感情は複雑で、難しくて…。だから、正しい選択と思った選択が、本当に正しいのかどうか、なんて…誰にも分からないってこと。それだけです」

「…」

と、私は無言で返事をしました。

…成程。そうなのかもしれませんね。

その迷い、葛藤、それこそが…。

…人間の感情、というものなのかもしれません。
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