アンドロイド・ニューワールド
だから、久露花局長は言ったのでしょう。

よくよく考えて、正しいと思う選択をしなさい、と。

客観的に見て、論理的である、合理的である「正しい選択」ではなく。

ただ自分が正しいと思った。それだけの理由で選んだ「正しい選択」を。

確かにそれは、人間の心を持たない私達『新世界アンドロイド』には、非常に難しいことです。

でも難しいが故に、決して投げ出してはいけないのです。

向き合わなければならないのです。

私自身の今の気持ち。奏さんの気持ち。生徒会長の気持ち。

色んな人の色んな気持ちを考えて、その上で、自分が正しいと思った道を選ぶ。

そんな難しいことを、いつもしてるんですね。人間って。

とても偉い、賢い存在です。『新世界アンドロイド』より遥かに。

ただ喜怒哀楽という、単純な感情だけでは言い表せないものが、そこにはあります。

「…分かりました」

と、私は言いました。

「非常に難しい難題ですが…。これは、私が考えて、私が結論を出さなければならないこと。だから、私が考え、選択します」

「そうですか。それは頑張ってください」

と、碧衣さんは言いました。

「あなたも、こんな難しいことをしてるんですか?」

「いいえ?僕は、いつだって紺奈局長の為に生きてますから。難しそうなことは考えません」

「…」

と、私は無言になりました。

「…何だか、先程のあなたの発言の説得力が、一気に欠けた気がしますね」

「しっつれいな…。僕はちゃんと自分で考えて、紺奈局長の為に生きると決めたんです。紺奈局長が望むから、僕は人間の感情を手に入れる。全ては紺奈局長の為。それが、僕の存在の理由なんです」

と、碧衣さんは恍惚として言いました。

そうですか。それは結構なことですね。

でもその結論が、あなたの「人間的感情」から得た結論なら。

あなたはこの『人間交流プログラム』において、私より遙か先に行っているのでしょう。

私も、見習わなければなりませんね。





ですから、まずは手始めに。
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