アンドロイド・ニューワールド
などと、難しい理屈を捏ねた私ですが。

結局一晩考えて、出た結論は一つだけ。

私は誰よりも、湯野さんと悪癖お友達一行や、他のクラスメイトや、生徒会長よりも。

ただ一人、奏さんと一緒にいるときの方が良い、と思っただけです。

考えれば考えるほどに、私の脳裏に蘇るのは、奏さんと過ごした日々のことばかり。

そして、これからも続くであろうその日々を、手放したくありませんでした。

それだけです。

私が生徒会長と恋人になることで、そのこれからの日々が、失われてしまうのだと思ったら。

それは、許せなかった。許容出来ませんでした。

生徒会長との、未知のこれからを過ごすより。

奏さんとの、これまでの日々をこれからも繰り返す方が良い、と。

そう思っただけです。

何度も言うように、それが正しい行為なのかは分かりません。

でも、私はそうしたいと思ったのです。

加えて言うなら、昨日生徒会長が奏さんを迷惑だと言ったのが、個人的に苛ついたので。

余計に、生徒会長と過ごすこれからの日々が、理想的なものになるとは思えなかったのです。

「ま、待てよ!」

と、後ろから生徒会長はさけび、私の手を掴みました。

顔面は蒼白で、非常に焦っているように見えます。

「まだ何か?」

「何かじゃねぇよ!何なんだよ一体!付き合ってくれるって言ったじゃないか!それをいきなり…!」

「それは申し訳ないと思っています。でも、『私は』この方が正しいと判断しただけです」

と、私は言いました。

しかし。

「何だよそれは?つまり、俺よりあの車椅子の男の方が良いってことか?あんな、自分のことも自分で満足に出来ないような奴の方が良いって?」

と、生徒会長は聞きました。

…今、ちょっとムカッとしました。

「俺とアイツと、どう比べたって俺の方が良いに決まってるだろ?俺の何が気に入らないって言うんだよ!」

「強いて言うなら、そういうところです」

と、私は冷たく言いました。

自分と他人を比べて、自分の方が優れている、などと。

そんなことは、自分で判断することではありません。

それは傲慢というものです。

「私とあなたとは、相容れません。奏さんのことを悪く言うあなたは、嫌いです。嫌いな人とは一緒にいられません」

「…」

「だから、さようなら。短い間でしたが、あなたには大変重要なことを学ばせて頂きました」

と、私は言いました。

私に突き放された生徒会長は、しばし呆然として。

そして、その場にへたり込んでしまいました。

気の毒ですが、私にはもう、関係のないことです。

だから、私は生徒会長に背を向けて、立ち去ることにしました。
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