アンドロイド・ニューワールド
しかし問題は、私が彼に接近禁止命令を受けていることです。

つまり、私の方から話しかけることが出来ないのです。

さてどうしましょうか。

話しかけることが出来ないのなら、文通でもしましょうか。

それとも糸電話なら受けてくれるでしょうか、と考案し。

とりあえず、今日の放課後にでも、紙コップと糸を買ってこようと思っていました。

そんなときでした。

「…瑠璃華さん!」

と、奏さんは私を呼びました。

まさか、向こうから話しかけてくれるとは。

それは予想外でした。

しかし。

「…」

と、私は無言でさささ、と後ずさりました。

「…何やってるの?」

「いえ、私は奏さんから、接近禁止命令を受けていますので…。近寄ることが出来ないんです」

と、私は言いました。

「…」

と、奏さんは呆気に取られていました。

しかし、大丈夫です。

「ご安心ください。色々手段を考案した結果、この後、紙コップと糸を購入しに出かけてきますので。糸電話なら、接近せずともお喋り出来ますよ」

「…色々手段を考えて、何で最終的に採用したのが糸電話なの…?」

と、奏さんは尋ねました。

「え?それは、やはり文通だと読み書きに時間がかかりますし、会話形式の方が連絡を取りやすいと…」

「って、そんなことは良いから!瑠璃華さん、どうしてあんなことしたの?」

と、奏さんは聞きました。

ぐいっと、前のめりに。

「そんなことあんなことと言われましても…。あ、ちょっと待ってください。今奏さんが数歩前に出たので、私も数歩後ろに…」

「あぁもう!接近禁止命令はもう良いから!取り消し!なかったことにして!」

と、奏さんは言いました。

え?接近禁止命令解除ですか?

「良いんですか?たった一日で命令を解除して」

「良いよ…。だって…近寄らなきゃ喋れないじゃん…」

と、奏さんは言いました。

これは僥倖です。

なんと、紙コップで糸電話を用意するまでもなく。

発令者である奏さんから、接近禁止命令の解除が言い渡されるとは。

これで、近寄って話すことが出来ますね。
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