アンドロイド・ニューワールド
では、改めて。

「およそ二日ぶりなのに、何だかとても懐かしい気がしますね」

「…そうだね」

「この二日、元気でしたか?何か良いことありました?」

「いや、そうでも…って、今はそんなこと話してる場合じゃないから」

と、奏さんは言いました。

まずは雑談から、と思ったのですが。

この二日間で出来たであろうわだかまりは、他愛ない雑談も許してはくれないようです。

世知辛いですね。

「どうしたんですか、奏さん」

「どうしたんですかはこっちの台詞だよ。何で、生徒会長と別れたの?」

と、奏さんは聞きました。

まるで、信じられないものでも見るかのような目で。

…そんなに意外ですか?

「奏さんも、同じように思ってるのですか。他のクラスメイト達と同じように、あの生徒会長との交際を断った、生意気な女だと」

「え?いや…そうじゃないけど…」

「私が生徒会長との交際を断ったのは、彼と一緒にいたくないと、『私が』思ったからです。彼から学ぶべき感情は何もないと」

「…!」

「そして厚かましくとも、願わくばまた奏さんと、親友に戻りたいと…『私は』思いました。だから生徒会長は断ったのです。彼の恋人になるより、あなたのお友達でいる方が良いと」

と、私は言いました。

更に。

「だから奏さん、これからも私の親友でいてくれませんか」

と、私は一番言いたかったことを言いました。

嫌だ無理です、と言われたら、少々…いえ。

かなり困りますが。

そのときは、手を変え品を変え、請願を続けることにしましょう。

とりあえず、今年までに親友に戻れたら、それで満足ですね。

すると。

「な、何それ…。つまり瑠璃華さんは、俺と一緒にいる為に、生徒会長の彼女になるのを諦めたってこと?」

と、奏さんは震える声で聞きました。

「前半は合ってますが、後半は違いますね。別に私は、生徒会長の恋人になることを諦めた訳ではありません。元々私は、彼に好意など欠片も持っていませんから」

と、私は答えました。

「そもそも、私にとって彼は初対面で、実は名前も知らない相手でした。そんな人間と、恋人になりたいとは思いません」

「じ、じゃあ何で一度はOKしたの?」

「それは、『人間交流プログラム』において、人間の感情を理解する為に、恋人がいた方が効率的ではないか、と判断したからです」

「…な、何それ」

と、奏さんは言いました。
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