アンドロイド・ニューワールド
「それはつまり、生徒会長からは学べるものが何もないから切り捨てて、俺の方が学べることが多いって思ったから?俺は何?瑠璃華さんにとって、便利な研究材料みたいなもの?」

と、奏さんは聞きました。

「いいえ。奏さんは、私のお友達です。親友です」

「…意味が分からないよ…」

と、奏さんは言いました。

意味が分からない。

つまり、理解不能ということですね。

分かります、その気持ち。

「私も、そうなんです」

「…え…?」

「私も分からないんです。確かに奏さんは、私にとって便利な研究材料…だったはずなのです。でも今私は、あなたを研究材料だとは思えない。あなたを私の友人だと言いたいのです」

と、私は言いました。

そして同時に、私は私の胸を押さえました。

「奏さんに突き放された二日前から、ずっとこの胸の中から、喪失感が消えないんです」

と、私は言いました。

以前、友人だと思っていた、湯野さんと悪癖お友達一行に、冷たくそっぽを向かれたとき。
 
あのときは、何とも思いませんでした。

彼女達が駄目なら、他の人と友達になれば良い。

すんなりと、あっさりと、そう思えました。

今思えば、それは私が湯野さんと悪癖お友達一行のことを、単なる研究材料としか見ていなかったからなのだと思います。

でも、今は違います。

「生徒会長といると、もう奏さんに近寄っちゃいけない。そう言われたときから、胸の中に喪失感が消えません。とても締め付けられるようで、苦しいです。私はこの感情の名前が、分からないんです」

と、私は言いました。

同時に私はその場にしゃがんで、奏さんと真っ直ぐに視線を合わせました。




「教えてください、奏さん。私はあなたに教えて欲しいんです。この感情が何なのか。人間の感情はどんなものなのか…。これまでも、これからも、私はあなたに教えて欲しいです」




…と、私は言いました。

これが、私の出した結論です。

例え、正しくなくても。正しい選択でなくても。

「私は」、この道を選んだのです。

誰に命じられた訳でもなく、ただ自らの意志で。
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