アンドロイド・ニューワールド
「…」

「…」 

と、お互いしばらく無言で見つめ合い。

この無言の応酬はいつまで続くのだろうと、考えていたそのとき。

「…はー…」

と、奏さんは根負けしたように言いました。

無言の応酬は、私の勝利のようですね。

「敵わないなぁ…。瑠璃華さんには…相変わらず…」

と、奏さんは苦笑いをしながら言いました。

笑ってますね。

久し振りに、奏さんの笑顔を見た気がします。

たった二日ぶりなのに。

「ちなみにそれ、俺が駄目って言ったら、どうなるの?」

と、奏さんは聞きました。

えっ。

駄目って言われるんですか?その前振りですか。

しかし、そうですね。駄目だと言われる可能性も、ない訳ではありません。

だとしたら…。

「毎日聞きます。うんと言ってくれる日まで。駄目と言われた日でも、その翌日になれば、また気が変わっている可能性がありますから」

と、私は言いました。

人間は、よく気が変わる生き物ですから。

久露花局長も、昨日チョコレートケーキを食べたのに、

翌日、「あぁ、昨日じゃなくて今日食べとけば良かったー!」などと言ってることが、よくありますし。

「じゃあそれって、俺がはいって言うまで、エンドレスで瑠璃華さんに誘われ続けれるってこと?」

「そうですね。そうなりますね」

「…俺、それ逃げ場ないじゃん…」

と、奏さんは言いました。

「相手の退路を断ち、確実に仕留めるのが狩りのコツです」

「そうか…俺は狩りの獲物なのか…。手強いハンターだなぁ」

「ありがとうございます。そして、一つ助言しておきます」

「何?」

「どうせ逃げ場がないなら、この場で潔く投降し、はいと言っておくのが賢明ではないかと思います」

と、私は言いました。

私は、奏さんがはい、お友達に戻りますと言うまで、毎日追いかけ回すつもりです。

それは正しいことではないのでしょうが、でも。

よく考えたら、碧衣さんも似たようなことしてますし。

特に気にしなくて良いでしょう。

しかし、追いかけ回される奏さんは、きっと苦労されるでしょうから。

今ここで潔く、降伏条約を締結しておくことを、強くおすすめします。

私も、毎日追いかけ回す手間が省けますし。

それに、奏さんがうんと言ってくれるまで、毎日この、寂しいという感情に苛まれ続けるのかと思うと。

それは嫌です。

だから、降伏条約を結ぶことを勧めた次第です。

すると。

「…ふふっ」

と、奏さんは吹き出して笑いました。
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