アンドロイド・ニューワールド
「おはようございます、湯野さん。今日は土砂降りの雨で、良い天気ですね」

「…は?」

私の、渾身のジョークだったのですが。

首を傾げられてしまいました。

不本意です。

ちなみに今日の天気は、晴天です。

「…何言ってんの…?」

と、湯野さんは怪訝そうな顔をしていました。

どうやら彼女は、私のジョークを理解出来なかったようです。

私とて、今日の天候が土砂降りの雨でないことは、理解しています。

しかし昨日、副局長は言いました。

「友達とは、冗談を言い合える仲である」と。

更に。

「私の秘密を教えます。実は私の口にはビーム砲が仕込まれていて、戦闘モードに移行したときには、口からビームが出ます」

と、私は言いました。

昨日、副局長は言いました。

「友達とは、秘密を教え合える仲である」と。

故に、私は自分の秘密を話してみたのですが。

湯野さんは、眉間に皺を寄せ、奇妙なものでも見るかのような目で、私を見ていました。

さては、信じていませんね?

「…何?いきなり…気持ち悪…」

と、湯野さんは呟きました。

やはり、信じてもらっていないようです。

「では別の秘密を。私の背中にはバーチャルウイングと呼ばれる、特殊兵装が装備されています。これにより、空中浮遊やミサイルの発射が可能になります」

「…ふーん。じゃあ、それ見せてよ」

と、湯野さんは言いました。

どうやら、ようやく信じて頂けたようです。

更に、騒ぎを聞きつけたとばかりに、湯野さんの悪癖お友達が群がってきました。

彼女達も、私の友人候補です。

何せ昨日の昼休み、あれだけ交友を深めましたからね。

「何々?どーしたの?」

「電波ちゃん、背中からビーム出るんだってさ」

「へぇ〜。アンドロイドだもんね〜」

信じてもらえて感謝していますが。

ビームが出るのは口からです。

しかし。

「じゃあ見せてよ。アンドロイドなんでしょ?」

「はい。しかし、残念ながら皆さんに見せることは出来ないんです」

と、私は答えました。

「は?何で?本当にそんなものついてるなら、見せられるでしょ?」

「これらの特殊兵装は、通常時はセーフティがかけられています。戦闘モードに移行したときのみ、セーフティの解除が可能になりますが、戦闘モード移行時には『Neo Sanctus Floralia』の許可が必要になります」

「…」

「そして、この許可が下りることは、滅多にありません。精々研究所の実験室でのみ使用される程度です。その理由は、外界で、つまり市街地で戦闘を行うと、周辺への被害が懸念されるからです」

と、私は言いました。

が、湯野さん達は、例の悪癖、小馬鹿にしたような薄ら笑いを浮かべて、

「何それ。そういう設定なの?」

「結局見せられないんじゃん」

「はいはい、いつもの電波妄想ねー」

と、けんもほろろに言いました。

…信じてもらえたと思ったのですが、どうやら、信じてもらえていないようです。

電波妄想とは何でしょうか。
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