アンドロイド・ニューワールド
ともかく。

「大事な『友達』であるあなた方に、実物を見せられないのは残念です」

「…は?」

と、湯野さんと悪癖お友達は、訝しげな顔をしていました。

「ですが、これはあくまで『友達』だけにしか話さない秘密なので、他の皆さんには黙っていてもらえると助かります」

何せこれは、私の秘密ですから。

そんな秘密を、民間人に教えても良いのか、という当然の疑問が浮かんでくるかと思いますが、

私が受けた命令は、『Neo Sanctus Floralia』についての情報を漏出しないこと。

私個人の情報を、クラスメイトに話してはいけないとは言われていません。

なので、まぁセーフでしょう。

でも、やはり『新世界アンドロイド』にこのような、使い方によっては危険な機能が備わっている、という情報は。

みだりに吹聴され、世間一般に知られては、『Neo Sanctus Floralia』にとっては良くないだろうと推測します。

従って、彼女達には、あくまでここだけの話。

つまりは秘密の内緒話、ということにしておいてもらいたいのです。

友達ですからね。

「何それ?他の人に吹聴して回ったりしたら、私達、そのネオ何とかいう組織に消されたりするの?」

と、湯野さんは悪癖笑顔を浮かべて聞きました。

あまり、笑顔で言う質問ではないと思うのですが。

いえ、多分彼女にとっては、軽いジョークのつもりなのでしょう。

冗談を言い合う仲という訳です。やはり友達ですね。

「『Neo Sanctus Floralia』ですね。それから、別に吹聴して回っても、組織に消されたりはしません。ただ、一応は機密事項に当たるので、吹聴されたくはありません」

「ふーん、よく考えたね、そんな中二臭い名前」

「『Neo Sanctus Floralia』のことですか?これは元々、『Sanctus Floralia』という組織から派生した、『新世界アンドロイド』を研究する組織で、」

「あー、はいはい。電波妄想お疲れ様〜」

と、湯野さんは手をひらひら振りながら言いました。

労われてしまいました。やはり友達ですね。

何だか、どうでも良さそうな雰囲気ですが。

これはきっと、組織にとって危ういと思われる情報を話している私が、これ以上機密事項を話さなくても良いよう、気遣ってくれているのでしょう。

やはり友達ですね。

素晴らしい友達が出来て、私は幸せ者です。
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