アンドロイド・ニューワールド
成程、彼も余り者なのですね。

ならば、余り者同士組めば、綺麗に19組が出来上がります。

私としたことが、あまりに彼が隅っこにいるので、気づきませんでした。

私は、車椅子に座っている彼のもとに歩み寄りました。

「こんにちは。あなたも一人なのですね」

と、私は言いました。

「え…?あ…」

と、車椅子の男子生徒は、戸惑ったように私を見上げました。

「そういえばあなたは、昨日私に購買部の所在地を教えてくれましたね。その節はありがとうございました」

と、私は頭を下げました。

「え、い、いや…」

「ところで、あなたは何故制服を着ているのですか?体育の授業では、体操着を着る規則になっていると聞きましたが」

「あ、うん…。そうだけど、でも…俺は…」

と、車椅子の男子生徒は言い淀みました。

何故か、とても後ろめたそうです。

「まぁ、着ているものなど何でも良いですね。私と組みましょう。ボールを取ってくるので、あなたは手前にいてください。私が向こう側からサーブを打つので」

「え、いや、でも…」

と、彼が言いかけたそのとき。

「あら?あなた何やってるの?」

と、体育教師が私のもとに近寄ってきました。

「何をと言われましても、サーブの練習を…」

「あ、そうか。あなた、転校生の子ね?」

と、体育教師は聞きました。

「そうですが」

「じゃあ、あなたを入れたら奇数になっちゃうのね。気づかなかったわ、ごめんなさい」

と、体育教師は言いました。

何を言っているのでしょう。

この場にいるのは38人なのですから、奇数ではなく偶数です。

算数の授業に参加したことがないのでしょうか。

「じゃあ、今日は先生と組みましょう。はい」

と、体育教師は言いました。

同時に、私にボールを差し出して、私をコートの一角に連れ出しました。

…?

私は、車椅子の男子生徒を振り返りました。

彼は何も言わず、私を見ていました。

…。

…気のせいでしょうか。

私には、心も感情もありませんから、人の感情を理解することは出来ませんが。

それでも何故か、彼の瞳は、悲しみを映しているように見えました。

初めての感覚に、私は不思議な気持ちになりました。

この不思議な感覚の名前を、何と呼ぶのか。

このときの私は、まだ分かりませんでした。
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