アンドロイド・ニューワールド
何度も言っていますが。

「私には感情がないので、楽しいのかどうか分かりません」

『え、でも…。お友達でしょ?お友達と一緒にいたら、他のクラスメイトといるときよりは、楽しい…って言うか、気が楽にならない?』

と、局長は聞きました。

気が楽になる?

彼女達と一緒にいるから、それが何だというのでしょうか。

「申し訳ありませんが、質問の意図が分かりません」

『えぇと…。じゃあ、他のクラスメイトと話してるときよりは、居心地が良いと思わない?』

と、局長は言葉を変えて尋ねました。

居心地が良い?

「そんな風に思ったことはありません。友達と一緒にいようが、他のクラスメイトと一緒にいようが、一人でいようが、私の気分に何の変化もありません」

と、私は答えました。

『え…。そうなの?うーん…』

『…それって、本当に友達なんですか…?』

と、局長と副局長は、首を傾げていました。

本当に友達なのかと言われましても。

私が友達だと思ったらその人は友達だと、そう言ったのは他ならぬ副局長です。

よって、私が友達認定した湯野さんと悪癖お友達一行は、私の友達です。

それに彼女達も、私にとても親切にしてくれますし。

冗談を言い合ったり、秘密を教え合ったりもしています。

完全に、友達の条件を満たしています。

…ん?

よく考えたら、私の秘密を教えたことはありますが、彼女達の秘密を教えてもらったことはありませんね。

これでは、秘密を教え合う、という友達の条件を満たしていないことになるかもしれません。

が、まだ一週間なので。

きっとこれから、彼女達も秘密を教えてくれることでしょう。

そう期待しています。

『…まぁ、まだ一週間しかないからね。そんなに簡単に、情緒が芽生えることはないだろう』

と、局長は言いました。

私もそう思います。

『これから、これからだよ。これからそのお友達達と、一緒に過ごしているうちに、いつか楽しいと思えるようになるよ、きっと』

と、局長は言いました。

私もそう思います。

『ゆっくり、友情を築いていこう。ね?』

「はい、分かりました」

と、私は言いました。

私も、そのつもりです。

私と、湯野さんと悪癖お友達一行との友情は、まだ芽生えたばかりです。

これから、その友情を大事に育てていけば。

いつしか、最終目的である、私の感情理解も達成されることでしょう。
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