アンドロイド・ニューワールド
「成程、理解しました」

「うん…。だから、先に行って。俺は遅刻しても…」

「いいえ、あなたが遅刻することはありません」

「え?」

と、車椅子の男子生徒は首を傾げました。

「何故なら、私は今からでも間に合う方法を考えついたからです」

「ほ、方法って…?」

「簡単な話です。私が、あなたと車椅子を背負って、階段を駆け上がれば良いのです」

「え、えぇぇ!?」

と、車椅子の男子生徒は言いました。

「では行きましょう。私の背中に掴まってください」

と、私は言いました。

そして、しゃがみ込んで彼を背負う準備をしました。

「え、い、いやいやいや。ちょっと待って」

「待ちません。時間が迫っています。さぁ早く」

「いや、重い、重いから。とてもじゃないけど背負えないよ」

と、車椅子の男子生徒は言いました。

成程、私の背中の積載量を気にしてくださっているのですね。

しかし、その心配は必要ありません。

「大丈夫です。私の身体は、戦闘モード移行時にはおよそ2トン、通常時でも300キログラムの負荷に耐えられるよう、設計されています」

「え、えぇぇ?」

「そして、高校一年生の男子生徒の平均体重は60キロ前後。加えてあなたは、高校一年生の平均身長よりやや低めで小柄な為、およそ55キロ前後と仮定して、そこから更に、あなたには足がないので、その分の重さもマイナスされます」

「…」

と、私は言いました。

更に付け加えるならば、彼は平均より筋肉力が少なく、痩せ型なので。

恐らく彼の体重は、50キロ台前半といったところでしょう。

「そこに車椅子の重さを付け加えても、やはり60キログラム前後。全く問題ありません。何ならあなたが5人いても、私一人で運搬可能でしょう」

「…運搬…」

「はい。ですから、気にせずお乗りください」

と、私は言いました。

これで、万事解決ですね。

…と、思ったのですが。

「…ううん。良いよ、君は一人で、先に行って」

と、車椅子の男子生徒は言いました。
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