アンドロイド・ニューワールド
「一つ目は、世の中には『死なば諸共』という言い回しがあります。どうせ一人遅刻するなら、二人遅刻したところで、大した問題ではありません」
と、私は言いました。
どうせ、このままではこの車椅子の男子生徒は、授業に遅刻してしまうのですから。
そこに私がもう一人加わっても、大した問題ではありません。
更に。
「二つ目は、あなたには恩があるので、その恩返しです」
「恩返し…?」
と、車椅子の男子生徒は言いました。
「はい。転入初日、私に購買部の所在地を教えてくれたことを覚えていますか?」
「あ…。それは…」
「忘れていましたか?」
「いや…。忘れてはないけど、でも…そんな、返してもらうような恩じゃないよ…」
と、車椅子の男子生徒は言いました。
謙遜しているのでしょうか。
それでも私は、恩返しをするに値する行為だと判断しているので。
大人しく、恩を返されてください。
「三つ目は、あなたが最後の一人だからです」
と、私は言いました。
「最後の一人…?どういう意味?」
と、車椅子の男子生徒は聞きました。
「私の友達作りの一環です。クラスメイト全員に声をかけて回っているのですが、なかなか色の良い返事がもらえずに、困っているところです。そしてあなたが、まだ声をかけていない最後の一人です」
「…」
「つまり、どうせあなたには声をかけるつもりだったので、ついでということですね。…どうせ遅刻は確定していますし」
と、私は言いました。
私達が東棟に向かっている間に、授業開始を告げるチャイムの音が、校舎内に響き渡っていました。
これでもう、何をしても無駄ですね。
もう遅刻しているのですから、どうせなら派手に遅刻しましょう。
何事でも、やるなら全力で、と偉人達も言っていましたし。
今こそ、その精神を活かすべきでしょう。
「…じゃあ、四つ目の理由は?」
と、車椅子の男子生徒が尋ねました。
「四つ目ですか?四つ目は…」
と、私は少し考えてから、
「…何となくです」
と、私は言いました。
「…」
これには、車椅子の男子生徒も無言で、そして呆気に取られていました。
私の方も、特に思いつかないのです。
自分が何故、このような行為をするのか。
授業に遅刻すれば、何らかのペナルティが与えられるかもしれないというのに。
そんなリスクを犯してでも。
何となく、放っておけない気がしたのです。
何故なのでしょう?不思議な感覚です。
久露花局長に聞けば、答えをくれるでしょうか。
まぁ、どうせ過ぎたこと。後の祭りという奴です。
「気にせず、存分に一緒に遅刻しましょう。大丈夫です。授業に遅刻したから教師に殺された、というニュースは、未だ聞いたことはありません」
「…それは、俺もない」
「そうですか」
なら、安心ですね。
それに、もし教師が、遅刻した私達に向かって、火炎瓶片手に襲ってきたとしても。
そのときは、私が戦うとしましょう。
相手が私と同じ『新世界アンドロイド』でない限り、多分勝てるでしょうから。
と、私は言いました。
どうせ、このままではこの車椅子の男子生徒は、授業に遅刻してしまうのですから。
そこに私がもう一人加わっても、大した問題ではありません。
更に。
「二つ目は、あなたには恩があるので、その恩返しです」
「恩返し…?」
と、車椅子の男子生徒は言いました。
「はい。転入初日、私に購買部の所在地を教えてくれたことを覚えていますか?」
「あ…。それは…」
「忘れていましたか?」
「いや…。忘れてはないけど、でも…そんな、返してもらうような恩じゃないよ…」
と、車椅子の男子生徒は言いました。
謙遜しているのでしょうか。
それでも私は、恩返しをするに値する行為だと判断しているので。
大人しく、恩を返されてください。
「三つ目は、あなたが最後の一人だからです」
と、私は言いました。
「最後の一人…?どういう意味?」
と、車椅子の男子生徒は聞きました。
「私の友達作りの一環です。クラスメイト全員に声をかけて回っているのですが、なかなか色の良い返事がもらえずに、困っているところです。そしてあなたが、まだ声をかけていない最後の一人です」
「…」
「つまり、どうせあなたには声をかけるつもりだったので、ついでということですね。…どうせ遅刻は確定していますし」
と、私は言いました。
私達が東棟に向かっている間に、授業開始を告げるチャイムの音が、校舎内に響き渡っていました。
これでもう、何をしても無駄ですね。
もう遅刻しているのですから、どうせなら派手に遅刻しましょう。
何事でも、やるなら全力で、と偉人達も言っていましたし。
今こそ、その精神を活かすべきでしょう。
「…じゃあ、四つ目の理由は?」
と、車椅子の男子生徒が尋ねました。
「四つ目ですか?四つ目は…」
と、私は少し考えてから、
「…何となくです」
と、私は言いました。
「…」
これには、車椅子の男子生徒も無言で、そして呆気に取られていました。
私の方も、特に思いつかないのです。
自分が何故、このような行為をするのか。
授業に遅刻すれば、何らかのペナルティが与えられるかもしれないというのに。
そんなリスクを犯してでも。
何となく、放っておけない気がしたのです。
何故なのでしょう?不思議な感覚です。
久露花局長に聞けば、答えをくれるでしょうか。
まぁ、どうせ過ぎたこと。後の祭りという奴です。
「気にせず、存分に一緒に遅刻しましょう。大丈夫です。授業に遅刻したから教師に殺された、というニュースは、未だ聞いたことはありません」
「…それは、俺もない」
「そうですか」
なら、安心ですね。
それに、もし教師が、遅刻した私達に向かって、火炎瓶片手に襲ってきたとしても。
そのときは、私が戦うとしましょう。
相手が私と同じ『新世界アンドロイド』でない限り、多分勝てるでしょうから。