アンドロイド・ニューワールド
「私の何処が面白いのか、説明をお願いしたいのですが」

「そういうところだよ」

と、車椅子の男子生徒は言いました。

理解不能です。

そういえば、他のクラスメイトにも似たようなことを言われましたね。

「お前のそういうところが〜」とか何とか。

他のクラスメイトは、馬鹿にしたように言うか、怒ったように言いましたが。

彼の場合、同じ言葉を言っているのに、顔は微笑んでいます。

何故かと言うと、私が面白いからだそうです。

…理解不能です。

学園生活が始まって以降、最大の謎がここに産声を上げました。

彼には、この謎が理解出来ているのでしょうか?

これは、追及する価値がありそうです。

「…失礼ですが、あなたのお名前をお聞きしても宜しいでしょうか?」

「俺?俺は、緋村奏(ひむら かなで)」

と、車椅子の男子生徒…改め。

緋村奏さんは、言いました。

「では、緋村さんに、一つお願いしても宜しいでしょうか」

「お願い?何?」

「私は今、とても大きな謎を抱えています。これが解決すれば、きっと私の友達作りに活かせることと推測します」

「…はぁ…」

「従って、私の謎を解き明かす為、また友達作りの一環として、これからもあなたに話しかけて良いですか?」

「…」

と、緋村さんは、無言でこちらを見上げました。

迷惑そうな顔、という訳ではなく。

どちらかと言うと、困惑した顔ですね。

「駄目なら、遠慮なくそう言ってください」

「あ、いや…駄目じゃないけど…。…俺で良いの?」

と、緋村さんは聞きました。

「あなたで良いのか、という質問の意図が分かりません。私は、あなたにお願いしているのですが」

「あ、そうか…。でも…俺といると、久露花さんまで…」

「私が、どうかしましたか?」

と、私は尋ねました。

しかし。

「…いや…何でも、ない…」

と、緋村さんは、声を小さくして言いました。

では、了承を得たということで。

…ん?もしかして、これって。

「そういえば、この学校に来て、こんなに長く話を続けたのは、あなたが初めてです」

「あ…そうなの?」

「はい」

と、私は答えました。

「話し相手が出来ました。これは友達でしょうか?」

「え?うん…どうだろう…?」

と、緋村さんは困惑したように言いました。

そうですね、まだ、朝比奈副局長の言った友達の条件は、満たしていないかもしれません。

では、まだ友達とは言えません。

「なら、ただのクラスメイト以上、友達未満の関係ということにしましょう」

「…何、その友達以上恋人未満みたいな言い方…」

「異存があるなら、お聞きしますが」

「いや…特にない…」

「そうですか」

と、私は答えました。

これも、友達作りの第一歩ですね。
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