アンドロイド・ニューワールド
では、更に交友を深めるとしましょう。

先程は、私から緋村さんについて尋ねたので。

今度は逆です。

「緋村さん」

「何?」

「私に、何か質問してください」

「…えっ」

と、緋村さんは言いました。

「先程は私が緋村さんに質問したので、今度は緋村さんが、私に何か質問してください。相互理解への第一歩です」

「そ、相互理解って…」

「何か気になることはありませんか?私の身体的特徴について」

と、私は聞きました。

別に内面的特徴に関する質問でも構いませんが、私には心がないので、内面的特徴を言葉にするのは難しいです。

「身体的…?えぇと…。…」

と、緋村さんは黙り込んで、私の身体を頭から足の先まで、ゆっくりと眺め。

「…久露花さんって、美人だね」

と、緋村さんは言いました。

物凄く、困ったみたいな顔で。

「以前、同じことを局長に言われました」

と、私は言いました。

『人間交流プログラム』が始まる前に、同じことを局長に言われた記憶があります。

「局長…?って、誰?」

と、緋村さんは尋ねました。

「私を開発した研究所の局長です」

「そ、そうなんだ…」

「しかも、それは質問ではなく感想です。そして私は人ではないので、『美人』という表現は誤りです。強いて言うなら、『美アンドロイド』と言ってください」

「び…。美アンドロイドだね…?」

「はい」

と、私は答えました。

「しかし、それは質問ではありません」

「えっ」

「あなたの感想ではなく、私に対する質問をお願いします。そうしなければ、相互理解は深まりません」

と、私は言いました。

私が美アンドロイドだろうと、醜アンドロイドだろうと、それは大した問題ではありません。

「し、質問か…」

「私について、何か知りたいことはありませんか?」

「…うーん…」

と、緋村さんは言い淀みました。

成程。

「分かりました。緋村さんは、私に対して全く興味関心がないのですね?」

「え?いや、そういう訳じゃ」

「それは申し訳ありません。私に興味がないのなら、無理に質問することは、」

「い、いや、ある!興味あるよ大丈夫!興味がないとか、そんなことはないから」

と、緋村さんは慌てて言いました。

慌てる理由は分かりませんが、どうやら私に対する興味関心は失っていないようで。

安心しました。
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