アンドロイド・ニューワールド
「じゃあ、読書が久露花さんの趣味なんだね?」

と、緋村さんは尋ねました。

「どうなんでしょう。私はあくまで、情報収集の一環で読んでいただけで、それが楽しかったのかどうかは分かりません」

「…そっか…」

と、緋村さんは落胆していました。

落ち込ませてしまって、申し訳ないです。

「…なら、映画やドラマは?観たりする?」

と、緋村さんは質問を変えました。

「はい。研究所で観たことがあります」

「どんな映画?」

「直近で観たのは、『オシイレノタタリ』ですね」

「…押し入れ…?」

「それから、『冷蔵庫の中』という映画も観ました」

「…冷蔵庫…?」

「はい」

と、私は答えました。

どちらも、素晴らしい名作でした。

「…どんな映画なの?それ…。特に冷蔵庫…」

「俗に言う、ホラー映画というものだそうです」

「あ、成程…。…え?でも、冷蔵庫の中に、何がいるの?」

「人がいました。これに関しては発想が面白かったので、私も試してみようと思いまして。研究所の、局長のおやつを入れている冷蔵庫に、こっそり隠れていたところ、冷蔵庫を開けた局長が腰を抜かして、泡を吹いて気絶していました」

「…」

「あれは、とても新鮮な体験でした」

と、私は振り返りました。

あのときの、局長の驚愕の顔。

今でも忘れられません。

「…あのさ、久露花さん」

と、緋村さんは言いました。

「何でしょうか?」

「今、ちょっと…楽しそうな顔してるよ」

「え?」

と、私は首を傾げました。

私には心がないので、楽しいと感じることはないはずなのですが。

不思議な現象ですね。
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