アンドロイド・ニューワールド
辿り着いたのは、体育の授業で使用している体育館。

道場破りとばかりに、私はその体育館に乗り込みました。

「あ、あの…。久露花さん、やっぱり、その、やめない?俺は…」

「ちょっと黙っててください」

「…済みません…」 

と、緋村さんは謝罪しました。

それに構わず、私は体育館の中をぐるりと見渡しました。

広い体育館内は、バスケットボール部や、バレーボール部などが、大半を占領していますが。

例の、バドミントン部も活動していました。

そして、広い体育館の一角、ほんの隅っこの辺りに。

ぽっかりと穴が空いたように、小さなスペースが空いていました。

卓球台が置いてあるので、恐らく卓球部の練習場所なのでしょうが。

今日は、誰も使用していないようです。

まぁ、それは関係ないですね。

私は緋村さんの車椅子を押して、例の体育教師のもとに、真っ直ぐ進みました。

そして。

「あなたにお話したいことがあります」

と、私は体育教師に話しかけました。

「ん?何?」

バドミントン部の部員の指導に夢中になっていた彼女は、私達の存在に気づいて振り向きました。

緋村さんは身体を硬直させていましたが、私はそんなことにも気づいていませんでした。

そのときの私は、無自覚で、無意識でしたが。

人間で言う、頭に血が上った状態になっていたのだと、後になって気づくことになります。
 
「どうかしたの?あなた達」

「どうかしてるのは、あなたの頭です」

と、私は言いました。

緋村さんは絶句していましたが、私はそれも気づきませんでした。

何なら、いきなり私に「頭どうかしてる」認定された体育教師も、唖然としていました。

「そんなことより、あのスペースは、今日は誰も使わないのですか?」

と、私は卓球台の置いてある、小さなスペースを指差しました。

「え?卓球部の練習場?…今日は空いてると思うけど…。卓球部は、週に二、三日くらいしか活動してないみたいだし…」

「そうですか。解答ありがとうございます」

と、私は答えました。

ではやはり、あの場所は空いているのですね。

「なら、今日はあのスペースを、私達に使わせてください」

「え?何で?」

「誰も使っていないのなら、私達が使っても問題ないでしょう?体育館は生徒が使う為にあるものです。部活動のものではありません」

と、私は言いました。

当たり前のことを、わざわざ説明させたいですもらいたいです。

「それから、もう一つ言いたいことがあります」

「な、何なの?」

「私は、あなたのことが嫌いです」

「…なっ…」

と、体育教師は絶句していました。

まさか、自分が好かれているとでも思っていたのでしょうか。

だとしたら、とんでもない自意識過剰です。
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