アンドロイド・ニューワールド
車椅子を押して、空きスペースに向かいながら。
「ちょ、久露花さん…!」
と、緋村さんは言いました。
もう、彼が黙っている必要はありませんね。
「はい、何でしょう」
「何でしょうじゃなくて…!不味いよ、あんなこと言って」
と、緋村さんは、私に振り向いて言いました。
焦ったような顔です。
「あんなこととは?」
「さっき体育の先生に言ったこと全部!」
「何か問題がありましたか?」
「いや、大問題だよ!」
と、緋村さんが声を荒らげて言いました。
「具体的に、何が問題なのか教えてください。私は、何一つ間違ったことは言っていないと思うのですが」
「…それは…」
と、緋村さんは言葉を失ってしまいました。
「私は彼女に、集団を引率する者としての心得を教授したまでです。あと、ついでに言うと…」
「…ついでに言うと?」
「…何となく、癪に障ったものですから」
「…」
何でしょう、この不快感。
身体の中に、異物が侵入したような気分です。
あの体育教師がしたことは、明らかな障害者差別だと、私は思うのです。
私のような、人ならざる『新世界アンドロイド』は差別しないのに。
同じ人間同士で、ただ車椅子に乗っているというだけで、他の人間と区別し、一人だけ除け者にするなんて。
人間の理解し難い行動です。
もし彼女が、「いざ自分が同じ立場になったとしても、そのとき自分は差別されても良い」と思っているなら、いくらでも差別すれば良いと思います。
しかし、少しでも自分は差別されたくないと思っているのなら。
彼女は即刻、緋村さんへの待遇を改めるべきです。
「…あんなこと言っちゃったら、きっと久露花さん、あの先生に嫌われるよ。体育の授業に出づらくなるし、体育の…評価も、下げられるかもね」
「別に構いません。私も現状、彼女のことがいけ好かないので、嫌われて結構です。それから、評価についての良し悪しは、『Neo Sanctus Floralia』からは何も指示されていないので、0点でも良いです」
「…躊躇ないなぁ…」
と、緋村さんは呆れたような、でも少し笑って言いました。
苦笑い、という奴でしょうか。
「…でも、何となくスッキリした。ありがとう」
「?何故緋村さんがお礼を言うんですか?」
「俺が…言えなかったこと、でも心の奥で思ってたこと、全部言ってくれたから。今まで誰も、そんな風に言ってくれた人はいなかった」
「…」
「もうバドミントン部のことは諦めてる。今更入っても足手まといだし、居心地も悪いだろうし…。だけど、久露花さんがそんな風に思ってくれたこと、それを口に出してくれたこと…その気持ちが嬉しい」
「…そうですか」
と、私は答えました。
先程、体育教師にぶつけた言葉。
あれは、私自身がスッキリする為に言ったつもりだったのですが。
緋村さんにとっても、そうだったんですね。
それなら、一挙両得ということですね。
「ちょ、久露花さん…!」
と、緋村さんは言いました。
もう、彼が黙っている必要はありませんね。
「はい、何でしょう」
「何でしょうじゃなくて…!不味いよ、あんなこと言って」
と、緋村さんは、私に振り向いて言いました。
焦ったような顔です。
「あんなこととは?」
「さっき体育の先生に言ったこと全部!」
「何か問題がありましたか?」
「いや、大問題だよ!」
と、緋村さんが声を荒らげて言いました。
「具体的に、何が問題なのか教えてください。私は、何一つ間違ったことは言っていないと思うのですが」
「…それは…」
と、緋村さんは言葉を失ってしまいました。
「私は彼女に、集団を引率する者としての心得を教授したまでです。あと、ついでに言うと…」
「…ついでに言うと?」
「…何となく、癪に障ったものですから」
「…」
何でしょう、この不快感。
身体の中に、異物が侵入したような気分です。
あの体育教師がしたことは、明らかな障害者差別だと、私は思うのです。
私のような、人ならざる『新世界アンドロイド』は差別しないのに。
同じ人間同士で、ただ車椅子に乗っているというだけで、他の人間と区別し、一人だけ除け者にするなんて。
人間の理解し難い行動です。
もし彼女が、「いざ自分が同じ立場になったとしても、そのとき自分は差別されても良い」と思っているなら、いくらでも差別すれば良いと思います。
しかし、少しでも自分は差別されたくないと思っているのなら。
彼女は即刻、緋村さんへの待遇を改めるべきです。
「…あんなこと言っちゃったら、きっと久露花さん、あの先生に嫌われるよ。体育の授業に出づらくなるし、体育の…評価も、下げられるかもね」
「別に構いません。私も現状、彼女のことがいけ好かないので、嫌われて結構です。それから、評価についての良し悪しは、『Neo Sanctus Floralia』からは何も指示されていないので、0点でも良いです」
「…躊躇ないなぁ…」
と、緋村さんは呆れたような、でも少し笑って言いました。
苦笑い、という奴でしょうか。
「…でも、何となくスッキリした。ありがとう」
「?何故緋村さんがお礼を言うんですか?」
「俺が…言えなかったこと、でも心の奥で思ってたこと、全部言ってくれたから。今まで誰も、そんな風に言ってくれた人はいなかった」
「…」
「もうバドミントン部のことは諦めてる。今更入っても足手まといだし、居心地も悪いだろうし…。だけど、久露花さんがそんな風に思ってくれたこと、それを口に出してくれたこと…その気持ちが嬉しい」
「…そうですか」
と、私は答えました。
先程、体育教師にぶつけた言葉。
あれは、私自身がスッキリする為に言ったつもりだったのですが。
緋村さんにとっても、そうだったんですね。
それなら、一挙両得ということですね。