アンドロイド・ニューワールド
その日の体育の授業は、またしてもバレーボール。

そして、またサーブの練習をするそうです。

助かりました。

それなら、簡単ですから。

またしても、二人一組になってサーブ練習をするよう、指示されたので。

私は、真っ直ぐに体育教師のもとに向かいました。

「済みません、一つお願いがあるのですが」

「…何?」

と、体育教師は私の顔を見て、不機嫌そうに言いました。

何か面白くないものでも見えたのでしょうか。

しかし、彼女の機嫌など、どうでも良いことです。

「倉庫にあるカラーコーンをいくつかと、ソフトバレーボールを一つ、貸して頂けますか」

「え、何で…」

「何で?その理由は、あなたがこの期に及んで、緋村さんに対する配慮を全くしていないからに決まっているでしょう?」

「…」

と、私は正論を言いました。

が、体育教師は唖然。

ついでに言うと、緋村さんも絶句していました。

皆さん、リアクションがオーバーですね。

「貸して頂けますか?」

「え…あ、どうぞ…」

「許可ありがとうございます」

と、私は答えました。

そして、体育館の倉庫に向かいました。

「ちょ、久露花さん。不味いって、先生にあんな…」

「?思っていることを伝えたまでです。何が不味いのですか?」

「お、思っていることって…」

「本音を口にするのは、意思疎通の基本です。それより、はい、これを持ってください」

「え、あ」

と、緋村さんは私が差し出したソフトバレーボールを受け取りました。

そして私は、カラーコーンを三つほど拝借しました。

よし、こんなものですね。

「久露花さん…。何するつもり?」

「皆さんサーブの練習をするようなので、私達もそれっぽいことをやってみましょう」

「え、でも…。久露花さんは…久露花さんは、普通に練習出来るのに…」

と、緋村さんは言いました。

確かにそうなのですが。

「どうせ、あなたが見学だと奇数になって、ペアがいませんから」

と、私は言いました。

前回のときは、あの体育教師が相手でしたが。

今回は、体育教師は私のことすら無視しています。

話しかけられても不快なので、別に無視しておいてもらって結構です。

「それにあなたも、体育の授業に参加したい意志があるようですから。創意工夫によって、それを可能にしましょう」

「…久露花さん…。でも…どうやって?」

「まずは、コートの外に出ます」

と、私は言いました。

そして、皆が練習している、ネットのかかったコートから出て。

体育館の端っこの方に行き、私は目視で距離を測りました。
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